Related Artist The Rolling Stones * 史上最強のRock Band by (いわ)ぶち


 [ バイオグラフィー ]
1960年春。イングランドはケント州ダートフォード駅。16歳のMickは、幼なじみのKeithとばったり会った。「よう、久しぶり」、Mickが小脇にロックとブルースのレコードを抱えているのを見て、Keithはすかさず言った。「それ、どうしたんだ?」

余りにも有名なこのエピソードから、ロック史上最強バンドの歴史が始まります。ボーカルのMick Jagger (1943年ケント州生れ)は、自分のブルースバンドにギタリストのKeith Richards (1943年ケント州生まれ)を誘い、やがてギターの他様々な楽器を弾きこなすBrian Jones (1942年グロースターシャー生まれ)が加入しました。翌1962年にはベーシストのBill Wyman (1936年ロンドン生まれ)、ドラマーのCharlie Watts (1941年ロンドン生まれ)らが加わり、1963年、5人はThe Rolling Stonesとしてレコード・デビューします。



時あたかも、The Beatles旋風の只中。軽快なマージービートを奏でるバンドが雨後の筍の如く出現し、Stonesもその例外ではありませんでした。しかしStonesの曲調は攻撃的でセクシー、音楽的にはブルース色の強いヘヴィなロックという、独特の個性を持っていました。また、不良っぽさがイメージとして定着し、現にドラッグで逮捕されたりもしています。1964年の米国をはじめとして、海外へのへのツアーを精力的に行い、やがてレコードの売上げもBeatlesと競う、人気・実力共にトップクラスのバンドにのし上がりました。

1969年、Brianはメンバーとの確執やドラッグの影響などで脱退し、その直後急死します。Stonesは後任のギタリストとしてMick Taylor (1948年ハートフォードシャー生まれ)を迎え、1970年には独自のレーベル[ The Rolling Stones Record ]を発足させました。コンサートツアーは一気に大規模化し、アルバムもコンスタントに制作され、いずれも名作の評価を受けています。

1974年、TaylorはStones脱退を表明。後任としてRonnie Wood (1947年ミドルセックス生れ)が加入します。その後、Keithがドラッグで実刑寸前になったり、ソロ活動とそれに伴なうメンバー間の確執が生じるなどの紆余曲折を経つつ、1989年、Stonesはロックの殿堂入りを果たします。そして1990年、デビューから26年目にして、初めての来日公演が実現しました。1993年、オリジナルメンバーの一人Billが脱退を表明。それでも打たれ強い彼らは、ソロ活動も充実させつつ、現役のロックバンド・The Rolling Stonesであり続け、世界中のファンが次のアルバム・ツアーを心待ちにしています。
 [ The Rolling Stonesの音楽と魅力 ]
冒頭に紹介したエピソードで、Mickが小脇に抱えていたレコードは、Muddy Warters (ブルース)と Chack Berry (ロックンロール)でした。当時、ロンドンの若者の間で、ブルースが流行していたのです。メンバーがいずれもロンドン近郊の出身であった事が、「ロックとブルースの融合」というStonesの特徴を決定づけたといえます。多くの同世代バンドがロックの多様性に耐え切れずに空中分解して行ったのに対し、Stonesにはブルースという強い支えがあました。カントリーやインド音楽、サイケ、ディスコなど様々な要素を吸収し、渋好みかと思えば、驚くほどキャッチーだったりする「しなやかさ」が、Stonesの音楽なのです。

ライブでは「上手でそつない演奏」では絶対に表現出来ない、興奮と刺激を迸らせるStones。Mickのクチビルから捻り出される粘っこい歌声と、叩き付けるようなリズム感。そしてKeithのかっ飛ばしリフと、土臭く悲しくなるようなブルースギターは、Stonesサウンドの表看板であり、Charlieのやや前のめりな刻みも、独特のノリを作り出しています。Billは常に確実なベースプレイで曲全体を支え、異常に耳が良い(Keith談) Ronnieの職人的なギタープレイは、時として優雅でさえあります。これらは、Stonesが「ライブ・バンド」としても最高である所以でしょう。

音楽的要素のみならず、「Stonesという存在」の魅力も見逃せません。彼らは「Bandをやる」という少年達のもろくて、儚くて、そして甘美な夢を現実として保ちつづけています。Glimmer Twins (コンポーザー、プロデューサーとしてのMickとKeithのコンビ名)は喧嘩と仲直りを繰り返し、他のメンバーもソロ活動を楽しんでいます。しかし一旦Stonesとして集まってアルバムを作り、ライブを行うや、そのバンドとしての格好良さに圧倒されずには居られません。派手なプロモーションに巨大な舞台装置、Mickのダンス、Keithの決めポーズ、Ronnieの笑顔に、Charlieのダンディズム…「こんなRockオヤジになりたい!」というロッカー憧れの未来像が、Stonesという存在なのです。
 [ The Rolling Stones - お勧めアルバム・ビデオ ]
* お勧めアルバム
『Beggars Banquet』 (1968年) : 青臭さと野心が同居する色彩豊かな作品。
『Let It Bleed』 (1969年) : ひときわブルース色が強く、Stonesの魂を知るには格好の一枚。
『Sticky Fingers』 (1971年) : ロック、ブルース、カントリーを絶妙のバランスで織り交ぜた名作。
『Exile On Main St.』 (1972年) : 最高傑作の呼び声も高い、お買い得アルバム。

* お勧めライブ・アルバム
『Love You Live』 (1977年) : "Honky Tonk …"のイントロを聴いただけでもゾクゾクする。
"It’s Only …" 以降の3曲は圧巻。

* お勧めビデオ
『25×5 The Continuing Adventures Of The Rolling Stones』 :
1989年にデビュー25周年を記念して作られたドキュメンタリー。入門編として最適の2時間。
メンバー自身のコメントや、貴重なライブシーンが嬉しい。
 [ The Rolling Stones と Tom Petty and the Heartbreakers ]
TP&HBの音楽性を説明する時、よく言われるのが「Dylan + Byrds + Stones」という表現。特にTomの歌い口は、打楽器のようなMickのそれに良く似ています。また、バンド演奏の精緻でいながらラフな格好良さも、Stonesと共通した魅力です。

StonesもTP&HBも、革新的なサウンド・クリエイター(たとえばBeatlesのような)という訳ではありません。その一方で、先輩ミュージシャンへの限りない憧憬と、その尊敬の上に立った独自スタイルの構築という、音楽へのアプローチ方法の点でも、TP&HBはStonesの影響を少なからず受けているようです。更に、ロックバンドであることへの愛情とこだわりも、Stonesが良い手本を示しているように思われます。

しかし、DylanやBiyrds、Beatles関係者に比べて、TP&HBとStonesの直接的なつながりは意外に希薄です。ただ一人の例外はBenmont(*)。一人のセッションマンとして、1994年にStonesのアルバム『Voodoo Lounge』のレコーディングに参加しました。3曲にBenmontの名がクレジットされています。目立つ演奏とは言えませんが、そこはロック界屈指の凄腕キーボード。中々渋い音を提供してます。
* BenmontはMick Jagger 『Wandering Sprit』(1993)、Rolling Stones 『Bridges To Babylon』
 (1997)にも参加しています。


直接的関係の薄さの一方、TP&HBのStonesに対する尊敬の念は、カバーという形で色濃く表れます。しかも、スタジオでのレコーディングよりも、ライブにおけるStonesのカバー(*)が頻繁なのです。網羅的な情報については、「Cover Songs」コーナーを参照願います。その特徴としては、Stonesのオリジナルよりも、「Stonesの演奏が特に有名な楽曲(カバー)」が多いようです。これはとりもなおさず、TP&HBがStonesの(純粋に音楽的表現という意味での)演奏と、その格好良さに強い憧れを持っていると言う事ではないでしょうか。
* Time Is On My Side、Heart Of Stone、Satisfaction、Stop Breaking Down、Around&Around、I'm A King Bee、
  It's All Over Now、Little Red Rooster、Bye Bye Johnny、Cry To Me、Crazy Mama などをカバーしています。


TP&HBによるStonesのカバーには名演奏がたくさんありますが、残念ながらオフィシャル音源ではほとんど聴くことができません(海賊盤については「Bootleg」コーナーをご参照下さい)。特に、97年Fillmoreでの"Time Is On My Side"と"Satisfaction"は圧巻。ぜひとも来日の暁には聞かせて欲しいものです。