SWINGIN' Live Report update: 2003. 1. 5


2002年 12月 13 & 14日   Madison Square Garden, NYC & Fleet Center, Boston
Live Report @New York & Boston Mayu
* 遠征プラン

今年(2002年)は、1999年以来の新譜が発売されTP&HBファンには嬉しい一年でした。ツアーも夏・秋の2回、それぞれ違った内容で行なわれました。欲張りな私としてはどちらも観たかったのですが、(時間的&金銭的)諸事情が許さなかったので、新譜『The Last DJ』をサポートする「小さい会場でのライヴ」とアナウンスされた秋のツアーに絞ることにしました。

とはいえ、9月前半に情報として出ていたのは西部地区のみ、しかもほとんどが郊外の大きな会場ばかりだったことで、かなりヤキモキさせられました。Las Vegas辺りで手を打とうかと考え始めた9月下旬、東部地区まで含めた20回以上の正式なスケジュールが発表になりました。残念ながら「小さい会場」はありませんでしたが、New YorkのMadison Square Garden (MSG)がリストアップされていました。やった!これで私の心は決り、冬の東海岸にGOです。

私がライヴ観戦を決めるポイントは「自分一人で行けるか?」ということです。英語はほとんど話せず、車の運転もできず、見た目も弱そう(??)… 残念ながら決して遠征向きではありませんので、「一人でも大丈夫」という確信が必要です。幸運なことにここ数回は仲間と一緒の遠征となっていますが、基本的にはその考えは同じです。そんな私にとって、NYのMSGはかなり嬉しい会場です(一度行ったことがある&地下鉄が使える)。ここならOK(なはず)です。

ライヴ1回だけの遠征では勿体無いので当然、NYの前後の都市をチェック。Chicago Bullsの本拠地United Centerも捨て難かったのですが、移動が楽な方ということでBoston CellticsのFleet Centerを取りました。着々と(頭の中で)計画を練るうちに、今回も遠征の同行者ができました。TOSHIさんと(いわ)ぶちさんです。

Bostonがツアー最終日、NYCがその前日。盛り上りも期待したいところですが、前回『Echo』ツアーの最終日は普段と変わりないライヴだったのを思い起こしました。きっと今回もTP&HBはいつも通りのライヴをやるのでしょう(それは決して悪いことではないと思いつつ)。日程を決めてプレセールスでチケットを取ったまでは良かったのですが、その後はいつになく忙しかったためライヴを観に行くという実感はわかず終いでした。気持の盛り上りも大切なのでちょっと残念。いろいろと煩わしいことが多かったのです。
* 会場&セット

MSG、Fleet Centerともキャパ1万数千人の巨大な屋内アリーナです。MSGはBobフェストでもお馴染みでしょう。嬉しいことに両会場とも市内にあるので地下鉄で行くことができます。MSGは「34丁目/Pen Station」からすぐ。行きは雨が降っていたのでタクシーを利用しましたが、帰りは(逆にタクシーで帰りたかったがつかまらず)夜の12時過ぎに地下鉄でホテルに戻りました。深夜でも利用者は結構いて、何とか無事でした。Fleet Centerは市内北方にある「North Station」に隣接しています。Bostonの地下鉄はかなり古く、規模も小さいもので、どちらかというと(地下を走る)路面電車という感じ。帰りは超混みでした。

座席の位置はMSGがステージ正面の後方スタンド、Fleet Centerがアリーナの中央辺り。スタンドは相当遠くて距離感があるのは否めませんが、座席に角度がついているのでラクにステージを見渡せました。一方、アリーナは完全にフラットなので小柄な日本人にはつらいです。前方には高い壁が立ちはだかっていたので、ステージを観るのはなかなか苦労しました。

さすがMSGと思ったのは場内でシャンパンが提供されていたこと。トレーにシャンパンを乗せた売り子さんが客席の間を行き来していました(ライヴ会場で売ってるのは初めて見ました)。Fleet Centerは会場の雰囲気も観客も素朴な印象でした。当然ながら両会場ともほぼ満員で人で埋めつくされました。ライヴ中に何度か会場を見まわしましたが、人・人・人に圧倒されました。最後にアンコールを求めて沢山のライターが灯された光景は、とても幻想的で美しかったです。
これまでのツアーと同様に、Jim Lenahanの手によるステージ・セットは、かなりシンプルなものでした。ステージ後方に支柱が組まれ、ステージを半円(半球?)状に包み込むように白いスクリーンが張られています。演奏中はそこにTP&HBの様子が映し出されると同時に、予め用意された映像もオーバーラップ。映像はモノトーンで、輪郭が際立って見えるので、TP&HBの様子はより一層カッコ良かった。シンプルなセットだからこそ、この映像の効果は抜群でした。

スクリーンの映像は左右2面に分けられていて、TPが常に映し出されるのは勿論ですが、TPの次に多く映っていたのは、今回バッキング・ボーカルで大活躍のScott Thurstonでした。他のメンバーは映る回数が少なかった気がします。会場内には他にスクリーンはなく、ステージ上のスクリーンと実物を交互に眺めながらライヴを観るという感じでした。
* Jackson Browne

今回のオープニング・アクトは「Special Guest」という待遇(??)のJackson Browneです。私はJacksonのことをよくは知りませんが、彼のライヴには非常に興味がありました。それは『The Last DJ』日本盤解説に「まばらな客席に向って空虚な“the Pretender”をうたい…」などとかなりネガティブなことが書かれていたからに他なりません。遠征を決めて以来、あの文章が頭に引っ掛かっていました。

実際のJacksonはどうだったか。まずはとにかく若々しいことにビックリ。この方、TPより年上なのですが、TPよりもオジサン度は低いかも(失礼)。確かにオープニング・アクトですから客席は満員とはいきませんが、決して「まばら」という状況ではありませんでした。Jacksonは彼のバンドとともに全10曲、約1時間のステージ。新譜『The Naked Ride Home』の曲とヒット曲を取り混ぜて演奏を進めて行きます。大部分を占めるTP&HBファンに語りかけるように自身の曲を演奏する姿が印象的でした。

Jacksonの演奏は概ね良かったし、観客の反応も好意的に感じられました。特に、彼のヒット曲を観客たちは喜んで聴き、彼の演奏や話に多くの観客が拍手で応えていました。決して「空虚な」ナンバーはありませんでした(きっと空虚なのはK氏の方なのでしょう)。これは私の観たNew York、Bostonに限っての話になりますが、他の会場での状況が著しく違っていたとは思えません。
* TP&HB

1997年以来、コンスタントにTP&HBのライヴを観る機会に恵まれて来ましたが、今回はこれまで私が観てきたライヴとは決定的な違いが2つあります。一つはメンバーチェンジがあったこと、もう一つは『The Last DJ』をサポートするため、演奏曲目が大幅に入れ替わっていること。期待とともに不安や感傷もありました。

登場したTP&HBはシックな装い。今年の彼らはステージにはほとんどスーツ姿で登場していますが、New York、Bostonでも同様でした。ディテールはあまり覚えていないので省略しますが、非常にセンス良くキマッていたという訳ではなく、相変わらずTPたちらしい不思議なファッション・センスだけど、なぜかカッコ良いのでした。もっとも、これはステージ上のTPやMikeだから許せるという感じでしょうか。

ショーはいつもと変わらないものだったようにも思えますが、彼らの台所事情からいうと実は結構苦しかったのではないかと考えてしまいます。事情というのは勿論、Howieの抜けた穴をどうやって埋めるかということ。コーラスはScottが全面的に参加し、曲によってはRonもBenmontも加わり、形上は上手くまわっていましたが、見ていてどこか余裕が感じられませんでした。要するにScottが主力メンバーに昇格し(彼はその期待に十分に応えているのだけど)、ユーティリティ・プレイヤーではなくなってしまったのですね。Howieの役割はScottが十分に務めたとして、今までのScottの役割をこなす人がいなくなってしまった。多分、それが私の感じた余裕のなさの原因でしょう。

New Yorkでのライヴ前半に、TPがHeartbreakersのメンバー紹介をした時のこと。一番最初に紹介されたのはScott。これは意外でした。ここではじめて、Scottが非常にリスペクトされている(せざるを得ない?)ことを認識しました。続いて、Benmont、Steve、Ron、Mikeの順にメンバーを紹介。Bostonでも同じ順番でメンバーが紹介されました。この日、TPはScottのことを「singing partner」と言って紹介していました。従来のHowieの役割が、完全にScottに移ったということなのでしょう。私はなぜかこの言葉に、しばらくドキドキしてました。

Mikeに関してはもう誰もが認める存在(というかそれ以上)。彼はとにかく変わらないです。飄々とギターを弾いて、愛嬌を振りまき(??)、やる時はやる。今回はScottの活躍に目を見張っていたせいか、ソフトな曲が多かったせいか、Mikeはあまり目立って感じられませんでした(本当は私が観てなかったから)。でも、そんなことはものともせず、楽しそうにギターを弾いているMikeはやはりMikeらしいかも。何のこっちゃ。

BenmontとSteveについてはいつもながら観察不足です。Benmontの髪型がタイトにスッキリしていて(別の意味ではなくてネ)カッコ良かったのと、ピアノのサウンドが非常に目立っていた以外は、記憶がハッキリしません。済みません。

今年のツアーから出戻ったRonは、ひたすらに演奏していたという印象です。聞くところによると、Ron Blairは「この上ない好人物 (イイ奴)」とのことで、急遽与えられた役割に戸惑い恐縮しているのではないかと感じました。実際、ステージでの彼はとにかく目立たないようにしているかのようでした。Ronはオリジナル・メンバーとしてというより、新人としてツアーに参加したのに近いかもしれません。今回はまだ肩慣らしということで、今後に期待したいと思います。

そして、Tomさん。DVDや写真でもわかるように、TPは一時期に比べて大分細くなり、ブロンドの髪は肩下まで伸びていました。遠目には若かりし頃を彷彿とさせるルックスです。(周囲からは私は「見た目重視」と揶揄されてますが、これは大事な要素なのです。) 私は今回もほとんどTPばかり見てました。実物を見ると、とにかく引き込まれてしまうのです。歌や演奏は言うに及ばず、動きや仕草もチャーミングでエネルギッシュ。『The Last DJ』発売時のプロモーションでの「怒れる中年(??)」といったイメージは微塵もなく、そこにはロックン・ロール大好きな「やんちゃ少年(??)」Tom Pettyがいました。
* 演奏曲

さて、肝心の演奏はどうだったか。技術的なことはわかりませんので、私の受けた印象を流れに沿ってつらつらと。彼らくらいのレベルになると、演奏の出来が極端に悪いということは有り得ないと思うので、後はファンとしての一喜一憂、願望の世界かもしれません。

NYCとBostonの演奏曲目は全く同じでした。新譜『The Last DJ』からの曲が5曲。『Hard Promises』以前の曲が5曲。『Full Moon Fever』と『Into The Great Wide Open』の曲が8曲。それ以降の90年代の曲が3曲。カバーは1曲("Feel A Whole Lot Better"は別として)。Special ("Handle With Care")が1曲。今回は軽妙なテイストの曲が好んで演奏されていたような気がします。

ツアー当初は、『The Last DJ』のナンバーのほとんどが演奏されていましたが、最終的に残ったのは5曲でした。これらは結果的にライヴ映えするもの(インパクトのあるナンバー)だということでしょう。楽曲としては他にも優れたものがあるのですが、繊細なナンバーは演奏するのも観客を受けさせるのも難しいのでしょう。本当は他の曲も聴いてみたかったのでちょっと残念でした(この点に関してはツアー初期に行けば良かったと思ってしまいます)。

新曲の中では"Lost Children"と"Can't Stop The Sun"が非常に印象的で良かったです。アルバムで聴く以上に緊迫感の高いサウンド、TPの強いメッセージが込められているように感じられました。オープニングの"The Last DJ"も勢いがありました。ライヴの頭にガツンと演奏されるのが合っていますね。"Have Love Will Travel"はアルバムでも出来が良く、人気の高い曲だけに期待していたのですが、個人的にはちょっと肩透かしでした。アルバムでの粘りのある演奏が再現されるには至らず、何かが欠けている、物足りない感じがしました。それでも観客の受けは良くて、「How about a cheer for all those bad girls and all the boys that rock and roll...」の辺りなんて、何とも言えない歓声で会場が一体になったようでした。今後、磨きがかかっていくことを期待します。

TP&HBの演奏がいつもと変わらなくとも、曲によってはHowieの不在が大きく響いていたことは否めません。もっとも影響が出たのが、"Mary Jane's Last Dance"でした。この曲はライヴでは常に最高のパフォーマンスが期待出来るナンバーだと思うのですが、何とその魅力が半減してしまっているのです。この曲の魅力はもう戻らないのかもしれない… 個人的にも大好きな曲だけに、ショックでちょっと動揺してしまいました。

一方、今回のライヴを通じて一番良かったと感じたのは、"A Woman In Love (It's Not Me)"。初めてライヴで聴いたので新鮮だったというのもありますが、演奏の出来自体も非常に良かったのです。アルバムのアレンジと大きく違いはしないのですが、決して懐メロではなく、今のHeartbreakersのサウンドによる良質のフォーク・ロック・ナンバーでした。そして、何よりも引き込まれたのはスクリーンに写ったTPの表情。何ともやるせない・切ない・ストイックなTPの横顔は、この曲の書かれた1980年代前半そのままでした(こういうの弱いです)。

続いて演奏された"The Waiting"も"A Woman In Love"の流れを受けて、とても良かったです。思えば同じアルバムの曲ですね。この曲を聴く時、なかなか日本に来てくれないTP&HBに「the waiting is the hardest part...」を重ね合わせてしまいます。ちょっと切なかったです。

『Full Moon Fever』と『Into The Great Wide Open』からのナンバーがライヴの主要部分を占めたのは、やはり楽曲的に粒揃いであるのが大きいのでしょうが、TPの精神状況にも影響しているのではないかと、かなり勝手に考えています。TPにとって1990年代後半は精神的に辛い時期で、今はようやくそれを乗り越えたと言います。だからこそ、その前の時期の曲を再び心から楽しんで演奏できるようになったのではないかと思うのです。ちょっとナンセンスな"Yer So Bad"が久々にツアーで取り上げられたのもそのために違いない、と私は勘ぐっております。そういった背景(勘ぐり)も含めて、私はこの曲が非常に楽しめました。今回はサビの部分の単語を一語一語切るように歌われていましたが、軽妙なノリは変わらずでTP&HBも観客も本当に楽しそうでした。

そして、今回のハイライトとも言えるのが、やはり"Handle With Care"でしょう。直前にロンドンで行なわれたGeorge Harrison Tributeで演奏された曲の一つ。それを今度はTP&HBとして取り上げたのです。Traveling Wilburysのヴァージョンを再現するというよりは、TP&HBが今の彼らの楽曲として演奏している感じ。とにかく嬉しいプレゼントでした。この曲が始まったところで、隣のTOSHIさんと思わず握手してました。

TP&HBのライヴでは彼らによるカバーも楽しみの一つなのですが、今回は1曲のみでChack BerryのR&Rナンバー"Carol"。「君たちは知らない曲かもしれないけど…」そう言うと観客のことは放っておいて彼ら自身が楽しんでる?と思えるほど、TPたちはとにかくマイペースで突っ走ってました。ファンにこういう曲を伝え、聴いてもらいたいと願っているのが彼ららしいです(本当はもっといろいろやって欲しかった)。

そして、最後の最後は"American Girl"でした。1976年に誕生したTP&HB初期のロックン・ロール・ナンバーが、今も変わりなく演奏されているのだと考えるだけで嬉しくなってしまいます。多分、これからも彼らはこの曲をファンとともにずっと歌い続けてくれるだろう、そんな風に確信しながら、勿論、私も一緒に歌っていました。なぜか、日本に来たら「She was a Japanese Girl」と歌ってくれるのだろうか?というヘンな妄想とともに。
* 言い訳
いつもながらの素晴らしいライヴを楽しんだのは勿論ですが、いろいろとネガティブな要素もレポートにも盛り込みました。あまり楽しそうなレポートになってなくて済みません。これはライヴの内容以前に、聴き手である私自身の問題であると思っています。音楽は個人の主観で聴き感じるもの、私自身が今回のTP&HBをどう受け入れたかなのです。それと、ライヴの環境は案外重要なものなのですね。次回は、それを教訓に万全の態勢で挑みたいものです。って、もう次回のことを考えているのか???


P.S. いつも以上にまとまりのないレポートで失礼しました。
Dec 13 & 14, 2002
Tom Petty Vocal, Electric Guitar, Acoustic Guitar
Mike Campbell Electric Guitar, Mandolin
Benmont Tench Piano, Organ, Backing Vocal
Ron Blair Base, Backing Vocal
Scott Thurston Guitar, Harmonica, Backing Vocal
Steve Ferrone Drums



 * 『The Last DJ』
 * 『Full Moon Fever』&『Into The Great Wide Open』

 * special&cover
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20


1
2
3
The Last DJ
Love Is A Long Road
Have Love Will Travel
Free Fallin'
When A Kid Goes Bad
Shadow Of Doubt
I Won't Back Down
You Don't Know How It Feels
Mary Jane's Last Dance
Handle With Care
Feel A Whole Lot Better

Can't Stop The Sun
A Woman In Love
The Waiting
King's Highway
Learning To Fly
Yer So Bad
Lost Children
Refugee
Runnin' Down A Dream

〜 encore 〜
You Wreck Me

Carol
American Girl