Live Report update: 2003. 7. 27


2003年 6月 26 & 28日 Sioux Falls Arena, Sioux Falls, SD & Marcus Amphitheater/ Summerfest, Milwaukee, WI
Midwestern Homesick Blues Shigeyan

 Sioux Falls Arena  6/26/2003
今回のツアー名は「The Lost Cities Tour」...広いアメリカと言えども、これまでTP&HBがあまり訪れてなかった中小都市を中心に回るツアーです。ツアーの初日はアメリカ中西部に位置するサウス・ダコタ州スー・フォールズ(Sioux Falls)。会場は空港から数km離れた場所に位置するSioux Falls Arenaで、同市で最も高級なホテル、Sioux Falls Sheratonと隣接していました。よって宿泊場所は迷わずそこに決め、空港-ホテル間の移動はシャトル・バスを使用することにしました。もしかしたらTP&HBが泊まるかも? というミーハー的な気持ちがあったことも事実です(あ、残念ながらそれは夢で終りました。ははは)。

モノの本によるとスー・フォールズの人口は12万人ですが、いざ着いてみると平原以外に何もありません。どの位何もないかというと、近所に住むサウス・ダコタ州出身の友達が「スー・フォールズ?何もない所だよ。大学しかない町だからねー」と言ってたくらいです。あのー、その人の出身地は人口5万人の都市なんですけど...。ホテルから徒歩1分という非日常的な感覚のまま会場に到着したのですが、ライヴ前の緊張感からは程遠い、のどかな雰囲気が漂っていました。コンサートというか、むしろ地元高校のバスケットボールの試合前のような雰囲気というか...。もっとも入場すると、中は5〜6千人規模のアリーナ...さすがに実感がわいてきました。他の観客を見る限り、TP&HBの熱心なファンというのはむしろ少数派で、この地域にはめったにない盛大なイベントを楽しむために集まった音楽ファンたち、という印象を受けました。着てるTシャツでもTP&HBは殆ど見かけなく、むしろ他アーティストのものが目立っていました。なお、会場入りが遅くなったため前座のMavis Staplesは見ることが出来ませんでした。
ステージが暗転し、メンバー達が登場するとものすごい歓声です。いつも思いますが、歓声の大きさ、迫力というのは日本のライヴとは桁違いです。こちらの人の声自体がでかいからでしょうか。機材チェックも兼ねてメンバーたちは気軽に試し弾きをするんですが、そのときのコードで演奏する曲が予想されるのはちょっと複雑な気持ちです。そんなわけで、TomがDコードをボソボソ弾いた時点で「あ、もしかしたら...」と思ったら、やってくれました。オープニングは"American Girl"。歓喜したのは言うまでもありません。

Tomの歌声は万全で、Steveは全く揺らぐことなく的確なビートを打ち出します。一方、Mikeのギターソロはかなり荒削りで、両手のコンビネーションがやや甘い感じもしました。次の"You Don't Know How It Feels"ではScottがブルースハープを入れるタイミングをトチるなど、それ以降も彼ららしからぬアラが目立ちました。ツアーの初日だからでしょうか...しかし、Tomは好調です。曲後半の踊りも掛け合いも完璧としか言いようがありません。

繰り返しになりますが、歓声がスゴいです。大歓声、大合唱。有名曲中心のセットリストということもあり、特に"Free Fallin'""Mary Jane's Last Dance"で観客一同が歌うのは圧巻です。決して歌いやすいメロディーではないのに、それを余裕でクリアし一斉に歌っているとかなりの迫力です。コアなTP&HBファンは比較的少ないにもかかわらず、ここまでの大合唱となるということは、いかにTP&HBの歌が一般に浸透しているかを象徴しています。

"The Last DJ"ではアルバムのロゴがステージ後方のセットに照らし出されましたが、一般の認知度が低い印象は否めなく、多くの観客にとっては休憩時間となったようです。例の放送禁止問題でラジオでかかっていないことも影響しているのかもしれません。曲の始めでRonのベースフレーズがあやふやになったりはしたが、まあご愛嬌ということで。次いでは何と"Handle With Care"。前回のツアーではGeorge Harrisonのトリビュートがらみで演奏されたものの、今後ライヴで聞くことはないと思っていた曲のため、単純に嬉しかったです。

"A Woman In Love"では原曲より1音キーを下げていますが、その分やや落ち着いてしっとりとしたニュアンスが出てました。器用にピアノとハモンドオルガンを弾き分けるBenmontの音色にすっかり聞きほれてしまいました。次の"The Waiting"もダイナミックな演奏で、観客の認知度は高く大合唱。続いた新曲"Melinda"は対照的で、全体的に物静かな演奏で、曲の途中までSteveが左手でシェイカーを鳴らし、その雰囲気に加わる良いスパイスとなっていました。残念なことにこれまた観客一同のトイレ・タイムとなってしまいましたが、Benmontの鍵盤さばきも印象的でした。

"Lost Children"ではRonのベース・フレーズがやや簡素化されていてちょっと拍子抜けしましたが、曲の後半にはギター・ソロの掛け合いもあり、なかなかエネルギーに満ちた演奏です。"Refugee"(これまた1音下げ)、"Runnin' Down A Dream"は申し分なく、観客一同の合唱も止まりません。
メンバー達は一旦ステージを去りますが、観客席を見渡すと一面に観客たちが掲げるライターの炎...これは本当に感動的です。しばらくしてTP&HBが再登場し大歓声。

Tomはリラックスした表情で掛け合い風の語りを入れ、それに対してバンドが絶妙なブレイクを加えますが、個人的にはSimpsonsアニメでのTom登場シーンを思い出してしまい、心の中で笑っていました。語りの最後に"I want you to rock me..."と歌い、続いたのは前回のツアーでも披露された"Carol"。ダンサブルなロックンロールで盛り上がらない訳がありません。そして最後には"You Wreck Me"で締めてくれました。

振り返ってみれば、ツアー初日ということもあり、彼ららしからぬミスが多々目立ち、彼らの演奏水準を考えると決してベストとはいえない内容でした。しかし、そこら辺のバンドのレベルは余裕でクリアしていることも事実です。まあ何より、こんな田舎町(失礼)まで彼らが回り、演奏を聞かせてくれるという事実だけで地元の人たちも満足したに違いありません。もちろん自分もです。

会場に直結したホテルの部屋へ戻り、ルームサービスで頼んだワイン...ふっふっふ、美味しかったです。しかし、部屋であまりにも騒ぎ過ぎため、隣の部屋の人からお叱りを受けてしまいました。すいません。

 Marcus Amphitheatre (Milwaukee Summerfest)  6/28/2003
この日の公演が行われるのはWisconsin州 Milwaukee...周辺部を含めた人口は100万人で、大都市シカゴからも程近い大都市でのライヴです。このライヴは1週間がかりで行われる音楽フェスティバル、Summerfestの一部として行われ、「Lost Cities Tour」が決定する前から決まっていましたので、「The Lost Cities Tour」のコンセプトを考えると異色なものかもしれません。

Milwaukee到着時には危うかった雲行きも、会場入りの頃にはすっかり快晴となりました。ビールを片手に、ミシガン湖畔につくられた多数のステージをブラブラ、Summerfestの雰囲気を楽しみました...あー至福。その後は余裕を持って会場入りしたため、キッチリとオープニング・アクトから堪能しました。

今日のオープニングはBo Diddley御大です。どうやら体を痛めたとのことで椅子に座ってのプレイでしたが、その歌声の深み、例の四角ギターから編み出されるユニークなギター・サウンドは素晴らしかったです。Bo Diddleyがいなければ、Jimi HendrixもRolling Stonesも、そしてもちろんTP&HBも存在しえなかったでしょう。"You Can't Judge A Book By Its Cover" "Mona" "Who Do You Love"などの曲が次々と披露され、音楽の歴史をつくってきた者だけが出来る深みのあるライヴに対して、観客はスタンディング・オベーションで応えていました。

もっとも、TP&HBファンはステージ裏での動きが気になって仕方なかったことでしょう。ステージ袖ではRonがステージの模様をビデオ撮影したり(誰に頼まれたのでしょうか?)、Benmontは夫人らしき女性とともに鑑賞し、Dana Petty夫人も楽しそうに談笑してました。一番笑えたのはMikeです。ステージ左側、ギターアンプ群の後ろから顔をチョコっと出してずっとステージを覗き込むMikeは、完全にミーハーな音楽ファンと化していました。数十分後にステージに立つギター・ヒーローとは思えない可愛さです。
さて会場を見回すと、ステージを中心とした半円形の座席の後方には芝生の自由席があり、あわせると2万人ぐらいのキャパでしょうか。程よい休憩の後、TP&HBが登場すると、一同がものすごい大歓声を挙げました。これがまたスゴい!その度合いたるや、一昨日の比ではありません。

一昨日と比べて選曲は1曲以外変わりないのですが、演奏の緻密さはこの日の方が断然上でした。一昨日「あれれ?」と思った"American Girl"でのMikeのギターソロは完璧でしたし、"You Don't Know How It Feels"の後奏ではTomがギター・ソロを追加してバリエーションをつけるなど、確実に演奏の質がグレードアップしていました。目立ったミスといえば、"Love Is A Long Road"でMikeのギター・アンプが正しく切り替えられてなくて、イントロでバンドが入る「ジャーン」の部分で前曲のレスリー・サウンド(ビヨヨヨンという揺れた音)が出てきたことくらいです(これにはむしろ笑ってしまいました)。

とにかく、この日はMikeの出来が際立っていました。最近のMikeは出来不出来の差が結構激しい印象を受けるのですが、この日は間違いなく最高の出来でした。しょっちゅうステージ前方に遠征し、ギターを垂直気味に構え、緩急に富んだ鬼気迫るギターソロを繰り広げました。他のメンバーもこれまた素晴らしいです。Benmontは"Woman In Love" "Melinda"でダイナミックなプレイを聞かせますし、"Handle With Care"でRoy Orbisonのパートを担当するScottも熱唱を披露します。Steveは完璧ながらも心底楽しそうに叩いていますし、Ronとのコンビネーションも申し分ありません。

バンドサウンドがこれだけまとまっていると、Tomの調子が悪いわけはありません。個人的に最も印象的だったのは、弾き語り風のシンプルなアレンジで演奏された"Learning To Fly"での歌声です。この歌にはごく個人的な思い入れがあり、そのことを考えながら聞いて思わず涙を流してしまいました。

終盤の"Refugee" "Runnin' Down A Dream"ではまたもやMikeがスパークし、Tomもそれに絡むようにステージ前方へと動きます。Mikeのビブラート、チョーキングなどの手技が冴えまくり、いやいや、本当にスゴいギターソロでした。
メンバー達は一旦ステージを去りますが、アンコールを求めるライターが照らされ、大・大・大歓声。もちろん一昨日も圧倒されましたが、ここでのライター、歓声はそれをはるかに上回るものでした。椅子席のみならず、芝生席の最後尾まで照らされるその明かりは本当に何とも言えないほどに感動的でした。

しばらくしてメンバー達は登場、アンコールとして一昨日と同じ2曲を披露しました。ここでTomは非常に印象的な2つの内容を語りました。

まず、"Carol"のオープニングです。ここではTomが女性役に扮して(とはいってもオカマ声になってる訳ではないです、念のため)男性に語りかけるセリフを掛け合いで披露し、合間合間にバンドのブレイクが入るという、盛り上がり大会の部分です。

「I am tired of hearing about killing and bullets」
「I just want you to rock me」

最近のTomのインタビューでは現在の政治情勢についての憤りが目立っていますが、その情勢下でのアーティストのアイデンティティについて次のように発言しています。
「アーティストの役割というのは、聞き手から少なくとも1時間はそういう痛みを和らげることだと思う。 (中略) エンターテイナーはある程度、それをする義務があると思うけど、それをしながら意思表示をすることも可能だとも思うんだ。」 (Depot Street : 2003年6月号より)

憤りを観客に問いかける、という直接的な表現方法もあります。もしくは、何も言わない、という選択肢もありえます。この困難な状況をTomはたった2行で表現してしまいました。あまりにもシンプルな分、言葉の重みは非常に重いものでした。

次に2つ目の発言は"Carol"が終った後です。実は、このステージでは向かって右側にHowie Epsteinのメイン・ベースがずっと置かれていました。それまでTomはそのことを一切触れていませんでしたが、このときTomはベースを指し、Howieの故郷であるMilwaukeeの人々に向かって"Let's hear it for Howie Epstein!"と語ったのです。当然ながら大歓声がそれに伴いました。これまでHowieの他界については多くを語らなかったTP&HBですが、今回の行為こそがHowieへの最大限の愛情表現だったのではないでしょうか。

ライヴの終了後はそんなことをボーっと考えていましたが、余韻に浸ってる暇はありませんでした。会場出口近くでLittle Richardのライヴを観てしまったからです。Little RichardはTomの仲人役を努めた成り行きから、「もしかして共演が?」とも考えましたが、これまた夢と終わりました。しかし強烈コテコテなキャラ。美川憲一もビックリの衣装、そして最高のロックンロール。曰く「オレは71歳になるんだ。皆はこんな71歳になれるかい?」と。なりたいかどうかはともかく、なれませんって。

話をTP&HBに戻します。一昨日は粗い演奏だったものの、個人的にはかなり楽しめました。しかし、この日はあらゆる面で"special"なライヴで、最初から最後まで感動が続く素晴らしいものでした。今後彼らのCDを聴く際には、そのたびに今回のライヴでの感動を思い出しそうです。あ、同時にLittle Richardのニヤニヤ顔も...。
Special Thanks

渡米して2ヶ月後の今回の遠征。渡米後の生活は決して楽とは言い難く、正直なところ精神的にキツい中での遠征でした。しかし、最終的には最高の4日間でした。ライヴもさることながら、バカ話のしすぎで終始笑いっぱなしでした。
mayuさん、TOSHIさん、araさん、言葉に出来ないほど感謝です。3人のユーモア、優しさ、音楽への情熱に乾杯。みっちゃん、日々感謝してます。Little Richardと図書館司書のお姉さん、笑いをありがとう。O.A... that song is for you.
Sioux Falls & Milwaukee