Live Report update: 2003. 7. 27


2003年 6月 26 & 28日 Sioux Falls Arena, Sioux Falls, SD & Marcus Amphitheater/ Summerfest, Milwaukee, WI
Live Report@Sioux Falls & Milwaukee TOSHI
Sioux Falls Arenaに入場したのは20時半をほんの少し過ぎた頃。予想はしていたのですが、場内はすでに明るくなっていて、(楽しみにしていた)フロント・アクトのMavis Staplesのステージは終わってしまっていました。ついつい夕食をゆっくりとってしまったのが敗因です。ウ〜ン残念。

Buffalo Springfield"Go And Say Goodbye"、The Animals"It's My Life"とTP&HBのお気に入りのバンドの曲が流されたのに続き、 The Rolling Stonesの"Wild Horses"が聞こえてきました。時間は20時39分、スタンドはほぼ満席状態。簡単なサウンド・チェックも終了して、スタッフがステージ後方に一列に並んだ頃には会場の興奮は最高潮に達していましたが、殺伐とした雰囲気は皆無でした。大都市と違いSioux Fallsの観客は、地元で行われる数少ないビッグネームのコンサートを楽しみたいといった感じにあふれていた気がします。

20時44分、The Rolling Stonesの"Dead Flowers"が始まりました。「なんだかGram Parsonsに関係した曲が続くな〜」などと考えながら歌詞を口ずさんでいると、サビの直前で会場の照明が全部落ちました。その瞬間、うなり声とも歓声ともつかない、観客の叫びが響渡り、その音に導かれるかのようにメンバーがステージ右手奥から登場してきました。
TP&Mike(以下MC)の使ったギターと演奏についての簡単な感想をまとめてみます。

1曲目は "American Girl"。深緑色のベルベットのジャケットにベストと黒いシャツで首にはオレンジ色の布をまとったTP。お馴染みのRickenbacker Signature Model(12弦)を抱えリズムを刻みながら軽くステップを踏んでいます。MCはミリタリー・グリーンのジャケット、紫色に黒のドットのシャツに身を包み、細い黒のネクタイを締め、Fender Telecaster(ブロンドのローズネック)をかき鳴らしていました。コーラスはScott。

2曲目 "You Don't Know How It Feels"はTPがFender Telecaster(ブルーのローズネック)、MCはFender Telecaster(ブロンドのローズネック)。スクリーンにはロールシャッハ・テストのような模様が写しだされました。名手Scottが2回目のハーモニカの入り方に失敗して慌てていたのが印象的でした。コーラスはScott。

3曲目 "Love Is A Long Road"はTPがFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。曲の始めにTPは拍手を求めるような素振りを見せました。コーラスはScott、Benmont、Ronの3人。

4曲目 "Free Fallin'"はTPがRickenbacker 1997(この曲でお馴染みのギター)、MCはGretsch Clipper(メタリック・ブルー)。曲を始める前にTPが「Good Evening」と一言挨拶を。雪のような模様が後ろのスクリーンに写しだされ、曲を盛り上げていた。コーラスはScott、Benmont。

5曲目 "You Got Lucky"はTPがRickenbacker 365『Pack Up The Plantation』のジャケットで持っていたアレです!)、MCはGretsch Clipper(メタリック・ブルー)。MCのアーミングとBenmontのピアノが最高!コーラスはScott、Ron。

6曲目 "I Won't Back Down"はTPがRickenbacker 365、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。曲の前に、TPは紙コップで飲み物を口に運び、MCは手で頭をグシャグシャと掻きむしっていた。Steveの叩くスティックのカウントで始まったイントロから観客は大合唱。白い光の放射がTPに集まる照明の演出が限りなく美しかった。コーラスはScott。

7曲目 "Mary Jane's Last Dance"はTPがFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。曲の前にMCは上着を脱いだ。演奏はとても良かった。コーラスはScott。

8曲目 "The Last DJ"はTPがGuild 12弦、MCはRickenbacker 360-12(朱色のサンバーストの12弦ギター)。曲の前にTPが上着を脱ぎ、その後にメンバー紹介(Benmont、Scott、Steve、Ron、MCの順番)。演奏はこの日の中で一番最低。Ronがおもいっきり間違え、それに影響されたかのように他のメンバーのプレイも冴えなかった。コーラスはScott。

9曲目 "Handle With Care"はTPがGuild 12弦、MCはFender Stratocaster(ブラックのローズネック)。この曲を聞くのはこれで3回目でしたが、その中では一番出来が良くない演奏でした(残念)。コーラスとボーカルはScott。

10曲目 "A Woman In Love(It's Not Me)"はTPがGretsch Country Gentleman、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。切なげなTPのボーカルとそれを際立たせる照明のマッチングが最高でした。コーラスはScott。

11曲目 "The Waiting"はTPがFender 12弦(ホワイト)、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。テンポが若干早かった気もしましたが、この曲はいつ聴いても胸にグッとくるものがあります。MCのソロも昔のフレーズに近くて、思わずニンマリとさせられました。コーラスはScott、Benmont、Ron。

12曲目 "Melinda"はTPがGibson Everly Brothers Model(ブラック)、MCはGibson Les Paul Custom(ブラック)。新曲は今までのTP&HBの曲とは趣が違い、即興演奏を中心にフワフワと漂うような感じのTPのボーカルが絡み合う構成でした。

13曲目 "Learning To Fly"はTPがGibson Everly Brothers Model(ブラック)、MCはGibson Les Paul(赤?)。観客に歌うように求めるTP。お決まりの風景がココでも見られました。コーラスはScott、Ron。

14曲目 "Lost Children"はTPがGibson SG(チェリー・レッド)、MCはGibson Les Paul(赤?)。前回のツアーの時もそうでしたが、この曲を演奏する時のバンドの一体感には凄いものがありました。しかし、観客の受けはいま一つなのです。何故だろう。コーラスはScott。

15曲目 "Refugee"はTPがFender Stratocaster(ブルーのローズネック)、MCはFender Telecaster(ブロンドのメイプルネック/ストリング・ベンダー付き)。この日の一番の演奏だったかもしれません。ステージを左右に動き回って観客を煽るTPと、煽られた観客の大声援に応えるかのように驚異的なテクニックを披露してくれるMC。見に来て良かった(笑)。コーラスはScott、Benmont、Ron。

16曲目 "Runnin' Dawn A Dream"はTPがGibson Firebird(茶色)、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。演奏は完璧で、観客のノリも最高。TPのボーカルにディレイを掛けたりして遊び心もありましたが、意外に早い最後の曲の出現にちょっと失望。コーラスはScott、Ron。22時20分に終了。

5〜6分程でメンバーがステージに戻ってきました。アンコール1曲目(17曲目) "Carol"。TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MC-Les Paul風(レッド)。TPのトーキング・ブルース風の語りが冒頭に入った、最近のステージではお馴染みの曲。

アンコール2曲目(18曲目) "You Wreck Me" TPはFender Telecaster(ブロンドのローズネック)、MCはクワガタギター。最高の演奏を聴きながらも、最後の曲ということで寂しさも。コーラスはScott、Benmont。22時45分に終了。
ツアー初日ということで今回はどのような曲を演奏するのか、新曲がセットリストに加えられるのだろうかなど、興味津々でLiveに臨んだのですが、残念ながら「期待外れ」としか言うことのできない演奏でした。

一番の原因は前回のツアーとセットリストに変更がほとんど無かったことです。そして、そればかりか名実共に新曲("Melinda")が1つ加わったのみで、全体的に演奏された曲が激減したしまったことにあります(N.Y.、Boston共に23曲演奏)。

18曲という数字はベテランのバンドにとっては決して少ないものではないでしょうが、彼らにとっては特別多い数ではありません。実際、昨年のツアーの中で20曲未満のLiveは皆無でしたし、今年の4月に行われたChicagoのVic Theatreでは最低26曲、最高で32曲という演奏数でした。

多ければ良いというものでもありませんが、TP&HBの演奏力をもってすれば20曲程度をこなすのはそんなに難しいことではないと思います。「今までに訪れたことのない場所を中心に回る」という趣旨のツアーであるので、その時にできる最高の演奏を聴かせるという意味では、ある程度固定されたセット・リストでも仕方の無いことでしょうが、曲数を減らすメリットは(極論かもしれませんが)全く無いと思います。

さらに困ったことに、この日の演奏は曲毎に極端な出来不出来がありました。2曲目でのScottのミスはケアレスミスとしても、8曲目のRonの演奏はプロのレベルには遥かに遠い演奏力しか持っていないのではと思わせる程の酷いものでした。入り方は間違えるは、フレーズは違っているは、それをいつまでも修正できずに続けるは...ここまで大きく無いにしても、Ronの細かいミスは随所で聞かれました。Liveの比重が高い彼らの場合は、こうしたミスは致命的と言わざるをえません。

その反面、7曲目の"Mary Jane's〜"では、この瞬間に世界最高のR&Rバンドの演奏を目の前にしているんだという確信を胸に刻み付けるほどの音を聞かせてくれました。この振幅の広さの原因は一体何なのでしょう?演奏を聴きながら不思議で仕方無く、そのためにどうしても全神経をステージ上の彼らに向けることができなかったのです。釈然としない感情が心に残った晩でした。
Fleetwood Macを観た翌日の28日、シカゴのホテルを11時前に出発し、一路ミルウォーキーへ。車窓を流れる風景が徐々に緑を濃くしていく中、初めて訪れる土地についてあれこれと思いをめぐらせていました。1泊の滞在では何もできないのは分かっていましたが、それでもHowieの生まれ育った土地に向かうという事実が、言いようの無い感情の昂ぶりを胸の中に起こしていたのです。

1時間程過ぎた頃、右手遠くに湖面のきらめきが見えてきました。ミシガン湖です。高速道路の周りの風景の中に徐々に建物の姿が増えていきました。ミルウォーキーはヨーロッパからの移民が多く住んだという街らしく、彼らの故郷を思わせる石造りの建物が独特の雰囲気を醸し出していました。その風景を眺めているうちに、道は上り坂になり、大きく右にカーブして市街の環状線に合流。やがて出口への分岐を下り、我々3人はHowieの故郷にたどり着いたのです。
前回の失敗を繰り返さないように、会場のMarcus Amphitheaterに早めに入場したのですが、席についてさほど経たないうちにフロント・アクトのBo Diddleyの演奏が始まりました。今年の12月で73歳になる御大は介添え人に支えられながら杖をつき、ステージ中央に設えられたイスに腰掛けました。さすがに衰えは隠せません。会場中の観客は大きな拍手をしながらも心配そうに見ていました。

ところが演奏が始まった途端に「生きる伝説」は現役バリバリのミュージシャンに変貌しました。歌はあくまでも艶っぽく、ギターはパワフルで正確なリズムを刻んでいる姿は、「まだまだ若い者には負けない」といった自負さえ感じられたものです。"Mona" "I'm A Man" "Bo Diddley" "Who Do You Love""You Can't Judge A Book By It's Cover"など、有名曲のオンパレードだったせいもあって、かなりの盛り上がりをみせました。
Bo Diddleyの演奏が終わった頃には、客席もあらかた埋まっていました。最前列に急遽陣取ったMayuさんが、他の観客の中で懸命に自分のポジションを確保している姿を笑いながら見ているうちに会場が暗くなりました。いつものようにステージ右奥からメンバーが登場してきました。他の会場と同様の地響きみたいな歓声が沸き起こり、地面が揺れるかのような拍手が鳴り渡ったのです。

その時、1人のスタッフが右奥から出てくるのが見えました。私の視線はメンバーではなく、彼に注がれたのです。それは、彼が左手でベースを持っていたからでした。そのベースは紛れもなく生前にHowieが弾いていたSadowskyのベースだったのです。Scottが演奏するために置かれているオルガンの前のスタンドにそのベースはそっと立て掛けられました。一瞬ですが、本当に全ての音が私の耳から聞こえなくなり、視線は釘付けで、何も考えられなくなったのです。私が現実に引き戻されたのは1曲目のイントロが聞こえてきた時のことでした。
さて、この日のLiveもTP&MCが使ったギターを中心に簡単にまとめてみます。

1曲目 "American Girl" TPはRickenbacker Signature Model 12弦、MCはFender Telecaster(ブロンドのローズネック)。コーラスはScott。

2曲目 "You Don't Know How It Feels" TPはFender Stratcaster(ブルーのローズネック)、MCはGibson 335タイプの白いギター。このMCのギターは初めて目にするものでした。ヘッドの形は昔のYAMAHAの製品に酷似していましたが、全体的なボディの形はEpiphoneのものにも似ていました。コーラスはScott。

3曲目"Love Is A Long Road" TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはGibson 335タイプの白いギター。Steveのカウントで軽快に始まりましたが、トラブルのためでしょうかすぐにTPのケーブルが差し変えられました。コーラスはScott、Benmont、Ron。

4曲目 "Free Fallin'" TPはRickenbacker 1997、MCはGretsch Clipper。曲を始める前にTPが軽く挨拶。Sioux Fallsと同じ展開でした。コーラスはScott、Benmont。

5曲目 "You Got Lucky" TPはRickenbacker 365、MCはGretsch Clipper。コーラスはScott、Ron。

6曲目 "I Won't Back Down" TPはRickenbacker 365、MCはGretsch Clipper。コーラスはScott。

7曲目 "Mary Jane's Last Dance" TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。Steveがハイハットでずっとリズムを刻み、その音に引き込まれるかのように会場中の視線がバンドの動きに釘付けになった瞬間、TPのギターから強烈なイントロが弾きだされました。この日の演奏は今までに見たり聴いたりしたどのテイクをも凌ぐ、(決して大袈裟ではなく)「奇蹟」とも呼べる内容のものでした。いや〜見に来て良かった(笑)。コーラスはScott。

8曲目 "The Last DJ" TPはGuild 12弦、MCはRickenbacker 360-12。ヒマがあると頭を掻くMC。この曲の前にもさかんに手を頭にやっていました。ここでメンバー紹介(Benmont、Steve、Ron、MCの順)。Sioux Fallsと同じ展開でしたが、幸いなことに曲の始まりは違っていたのです。Steveのドラムセットの前に立つTPを中心に左にMC、そして右にRon、Scottと並びアイコンタクトを交して、まるで呼吸を合わせるかのように一斉に演奏を始めました。コーラスはScott。

9曲目 "Handle With Care" TPはGuild 12弦、MCはFender Stratocaster(ブラックのローズネック)。コーラスはScott。

10曲目 "A Woman In Love(It's Not Me)" TPはGretsch Country Gentleman、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。コーラスはScott。

11曲目 "The Waiting" TPはFender 12弦、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。コーラスはScott、Benmont、Ron。

12曲目 "Melinda" TPはGibson Everly Brothers Model、MCはGibson Les Paul Custom(ブラック)。

13曲目 "Learning To Fly" TPはGibson Everly Brothers Model、MCはRickenbacker 360 Capri(朱色のサンバースト。『Goin' Home』というTP&HBのドキュメンタリー番組の中で"Mary Jane's〜"の演奏シーンでMCが弾いていたのと同じ物)。ここでやっとTPとMCが上着を脱ぎました。いつもより遅いのも、会場が野外で多少冷え込んでいたせいでしょうか。コーラスはScott、Ron。

14曲目 "I'm Crying" TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはFender Telecaster(ブロンドのメイプルネック/ストリング・ベンダー付き)。この日初めてのカヴァーはAnimalsの曲。楽しそうに演奏していたメンバーの表情が印象的でした。コーラスはScott、Benmont。

15曲目 "Refugee" TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MCはFender Telecaster(ブロンドのメイプルネック/ストリング・ベンダー付き)。この演奏も文句無しに最高でした。いつもとは違い、ストリング・ベンダーが付いているギターを使ったMCの驚くべきテクニックとフレーズにただただ圧倒されるばかり。コーラスはScott、Benmont、Ron。

16曲目 "Runnin' Down A Dream" TPはGibson Firebird、MCはGibson Les Paul(サンバースト/フレイム・メイプル・トップ)。ステージを所狭しと動き回ったTPが、演奏の最後にHowieのベースを触った時、思わずグッときてしまいました。コーラスはScott、Ron。

アンコール1曲目(17曲目) "Carol" TPはFender Telecaster(レッドのローズネック)、MC-Les Paul風(レッド)。

アンコール2曲目(18曲目) "You Wreck Me" TP-Fender Telecaster(ブロンドのローズネック)、MC-クワガタギター。コーラスはScott、Benmont。

※この日は時計を持っていなかったために細かい時間経過に関しては分かりません。
スー・フォールズでのミスを全部解消していたのはさすがでした。勿論、そうした姿勢を常に失わないバンドであるからこそ、こんなに長く聴き続けてくることができたのですし、これから先も希望を託したい存在なのです。

この日聴くことのできた"Marr Jane's〜"は、私が今までに聴いたことのあるどの演奏よりも質の高いものでした。曲の質を高めるためにメンバー各々のテクニックを磨いたり、テクノロジーの恩恵を得るといった、凡百のバンドがたどりつけるようなレベルなどではなく、限られたものたちだけが奏でることができる響きだったような気がします。永遠の一瞬がそこにはありました。

Howieの件を強引に結び付けてしまう気はありませんが、この日のTP&HBはミルウォーキー夜空の下で空に浮かぶ何かを感じていたのではないでしょうか。こんな演奏を日本で聴くことのできる日が来ることを願ってやみません。
Sioux Falls & Milwaukee