Live Report update: 1999. 6. 5


1986年 3月 5日 東京/日本武道館
True Confessions Tour with Bob Dylan TOSHI
「夢の共演!真のアメリカン・スピリットを伝える必見ライヴ」 「今世紀最大のアーティスト/人気絶頂のR&Rバンド」そんなコピーが付いていた...

Bob Dylanは78年以来、Tom Petty & The Heartbreakersは80年以来、両者共に2度目の来日のコンサートは「静かな興奮」に包まれて幕を開けた。

個人的にはTP&HBを観にでかけたコンサートだったが、それには理由があった。前年に発表された『Southern Accents』で感じられた「土の香り」がどこからやってくるのかを知りたかったからだ。フロリダで生まれ、ジョージアを越え、ロサンゼルスで培われた、その香りは、The Byrds、Flying Burrito Brothersなどの先達が放っていたものと同じものかを、肌で確認したかったからでもある。
コンサートは手探り状態で始まった様な感じがした。しかし、曲を経る毎に抜群のコンビネーションを見せ始めた。そこに居たのは今世紀最大のアーティストと人気絶頂のR&Rバンドの組み合わせではなく、偉大なロック・シンガーと見事なまでに的確な演奏でグルーブを生みだすロックン・ローラー達だった。そこには伝説も人気等という不確かなものも存在せず、ただ会場を埋め尽くした観客とパフォーマー達のみに許された至福の時が流れていた。

残念なことにTP&HBの単独演奏は"Straight Into The Darkness""Breakdown""So You Want To Be A Rok&Roll Star""Refugee"の4曲しかなかったが、彼らを目当てに行っていた私にとってはとても素敵な贈り物であった。地味目な服装のTP&HBの中で、ダークなジャケットの下に原色のシャツを着て、激しく動き、バンドに指示を与え、そしてほんの少しはにかんだ様に微笑むTomの姿が今も忘れられない思いでになっている。

Heartbreakersのメンバーも個性豊かな演奏で楽しませてくれた。堅実で力強いリズムを生みだすHowieとStan。テクニックをひけらかすことなく、それでいて心に残る音を聴かせてくれたBenmot。そしてMikeのギター。特にRickenbackerを抱え、Clarence Whiteタイプのソロを聴かせてくれた"So You Want To Be A Rok&Roll Star"は、このコンサートのハイライトとも呼べる瞬間だった。

この時に心に芽生えた想い、「単独公演を観たい」という気持ちは、13年たった今も叶えられずにいる。それを考えると、最高の、しかしとても苦く切ない想いでである。できれば、もう一度、この日本でTP&HBのコンサートを観たい、もう一度あの感動を味わいたいというのが今の正直な気持ちだ。