Live Report update: 1999. 8. 11


1999年 7月 9、10日 Tweeter Center for the Performing Arts, Mansfield, MA
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1986年以来、日本の土を踏んでいないTom Petty and The Heartbreakers(以下TP&HB)が、ニュー・アルバムの発表にあわせて4年ぶりの全米ツアーを始めました。ツアーに先立って、FillmoreやNY、イギリス、ドイツなどでもライブが行われ、HP上で様々な情報が流されるたび彼らのライブを見たいという気持ちも盛り上がってきました。しかし、日本公演は過去の来日回数の少なさから考えると難しそうです。そこで夏季休暇の取れる時期でもあり、仕事の都合をつけて、いっそのことアメリカへ行ってみようかという気持ちになりました。

ツアー日程を調べてみると、本拠地である西海岸だけでなく、かなりバラエティに富んだ都市でライブがありました。どうせ行くなら2回以上は見てみたいと思いながら、日程調整をしてみると、どうやら7月9日と10日のTweeter Centerがベストです。早速インターネットで調べると、ボストンから車で1時間ほど郊外の屋根付きの屋外会場です。また、チケットはTicketmasterで購入可能で、しかも割と良い席が手に入りそうです。海外の見知らぬ町でレンタカーを借りるのがちょっと不安でしたが、ライブの誘惑には勝てません。結局、アメリカへ行くことに決めました。

7月8日、関空発ミネアポリス経由でボストンに到着し、予約しておいたツーリスト向けホテルにチェックインしました。近くの劇場ではWhitney Houstonが公演中でした(ここでTP&HBがやってくれたら、近くて便利なのにと思わずにいられませんでした)。

翌9日、早起きして行った市内観光を2時過ぎに切り上げて、レンタカーを借りに行きました。日本で予約をしていたため手続きはあっけないほど簡単で、カウンターでもらった地図を手に一路会場へ向かったのでした。会場へは4時頃着き、巨大な駐車場へ駐車すると、早く到着した人は思い思いにバーベキューやキャッチボールをしながら開場を待っていました。僕はオンラインで購入したチケットをBox Officeで受け取り、入り口の辺りで時間をつぶしました。この間、TP&HBのサウンドチェックがあり、完奏ではありませんが"Listen To Her Heart"や"American Girl"、そして曲名は分かりませんがR&Bが聞こえてきました(屋外の会場ならではでしょう)。ちなみに、TP&HBのライブが始まるのが9時前だからでしょうか、入り口辺りには数十人位のファンしかいませんでした。

開場は5時30分に行われましたが座席のあるエリアへは6時まで入れず、グッズを見たり、ファーストフードを食べて時間をつぶしました(サブ・ステージでは地元バンドが演奏していました)。グッズはあまり種類がなく、Tシャツ(5種類位、サイズが合うのはあまり無い)、プログラム、キーホルダー、バッチ位でした。座席に着いてみるとステージまでは50メートルくらい離れていますが、すり鉢状になっているため以外と見やすくいい感じです。(map参照)

7時30分、Special GuestのLucinda Williamsのステージが始まりました。彼女のカントリーロックは東部のこの町でも好意的に受け入れられ、やはり"Change The Locks"が一番人気でした。ところで最初は観客席は3割位しか埋まってませんでした。芝生席(後方には芝生席があるのです!)もがらがらです。チケットが売れているのか不安になってきましたが、 8時30分に彼女のステージが終わると同時にあっという間に座席が埋まっていきました。そうです彼らはみんな、売店やベンチで時間をつぶしていたのです。

ステージの最終調整が行われる中、会場をチェックします。年齢層は30代を中心に親に連れられた中高生やビートルズ直撃世代の50代までかなり幅広く、彼らの支持層の厚さがうかがわれます。また、ほぼ100%が白人で数人アジア系の人がいただけです。ステージはペルシャ調の絨毯が敷かれ、サイケなイスラムの命の木といった感じの模様がプリントされた3角形の幕が3枚ステージ中央に懸かっています。また、東洋風の壺が天井から7つぶら下がり、そのうちいくつかからはスモークがでています。そして、ステージ右端には、「あの曲」の時に使う「あの帽子」が納められた「あの箱」がありました。
8時45分、客電が落ちました。ついに、Tom Petty and The Heartbreakersの登場です。 1曲目は"Jammin' Me"でした。当然のように客席は総立ちです。それほどの思い入れのある曲ではありませんでしたが、オープニングにふさわしいノリがあり、この曲を見直しました。続いては"Runnin' Down A Dream"です。イントロが聞こえただけでゾクゾク来るようなドライブ感があり、2番では会場まで走ってきたハイウェイのことも頭をよぎりました。もちろん Mikeのギターソロもキマっていました。3曲目は"Breakdown"でした。会場に歌わせるという「Pack Up The Plantation Live!」などで見られる様な演出はなく、また中間部分をあまりのばすことなく演奏され、これがかえって良かったように思えました。

4曲目はニューアルバムから"Swingin'"、個人的には今回のアルバムのベスト・トラックの1つです。Tomがあのイントロを弾き、それにBenのピアノとScottのハーモニカが絡むころ、会場はまさにSwingin'し始めました。次は今回のツアーで久々に演奏されている"Don't Do Me Like That"、アルバム『Damn The Torpedoes』の大ヒットの原動力になった曲です。ヒットシングルはやっぱり盛り上がります。'97にニューオリンズに行ったとき、ライブハウスで地元のバンドがこの曲を演奏していて感激したのを思い出しました。

さて、ここでTomがMikeを紹介します、「彼はシンガーでもあるんだ」と。そして"I Don't Wanna Fight"が演奏されました。意外と(少なくともKieth Richardsよりも)、ボーカルは上手でした。会場の反応も好意的です。7曲目は"Mary Jane's Last Dance"。この曲も会場の反応が良くサビは大合唱でした。次はアコースティックにアレンジし直した"I Won't Back Down" でした。この曲はサビの"Hey baby, There ain't no easy way out"を抑え気味に歌っていて、会場とはちょっとしっくり行ってない感じでしたが、大好きな曲なので僕的にはNO問題でした。続いてはサウンドチェックでも聞こえてきた"Listen To Her Heart"でした。これはレコード(CD)を忠実に再現するような演奏で、The Searchersを思わせるギターの音が心地よく響いていました。

10曲目と11曲目はアルバム『Wildfflowers』からの曲が続きました。"It's Good To Be King" はギターソロなど間奏がかなり長く、あまり好きな曲でもないのではっきり言って聞いていて途中でだれてしまいました。他のお客さんも途中から席についている人が多かったです。『Wildflowers』からだったら"Honey Bee"を聞きたかったですね。"You Don't Know How It Feels"はなかなかウケが良かったです。

さて、ここでいったんTomが引っ込んで、Mikeのインストが始まります。曲はThe Pyramidsの1964のヒット曲で、The Venturesもカバーしている"Penetration"です。途中、The Shadowsの "Apache"も組み込まれていました。これまでのライブで演奏された"Diamond Head"や "Slaughter On 10th Avenue"と比べると地味な曲なので、もっとメジャーな曲を聴きたかったです。ちなみに、トイレやビールを買いに行く人が多かったです...。

Tom再登場の曲は"Don't Come Around Here No More"でした。シャツも赤から白へ着替えています。舞台の右端へ行き、例の箱からあの帽子を取り出し、それを仰々しくかぶるとイントロに突入です。TP&HBも楽しそうに演奏していました。後半のロックンロールになるところはライトが点滅になり、ドラッグソングっぽいムードを醸し出していました。ところで、僕の左隣のカップルはライブの途中からビールに加え、紫の煙を吸い始めたのですが、この曲や"You Don't Know How It Feels"の演奏が始まると大喜びしてました。やっぱりそういう曲なんでしょうか。

14曲目・15曲目はTomが再びアコースティック・ギターに持ち替え、"Walls"と"Room At The Top"が演奏されました。特に"Walls"ではTomが意外?と歌が上手であることが分かったのでした。また、"Room At The Top"では、MikeとBenのかけ合いがあるのですが、ライブなのだからもっと長くすればもっと盛り上がったのではないでしょうか。"It's Good To Be King" をあれだけ長く演奏するよりは良いと思うのですが。

次は、僕にとっては非常に思い出深い"You Got Lucky"でした。高校2年生だった僕が初めて聞いた彼らの曲が"You Got Lucky"だったのです。当時サイパンから日本向けの音楽専門の短波放送が流されており、勉強しながら聞いていたのですが、多いときは2時間に一度はかかっていた曲でした。その後、「Best Hit U.S.A」で放送されたビデオ・クリップをビデオに録り、何度も繰り返し見たのを思い出します。17年目にしてやっと見ることができた単独ライブで、出会いとなったこの曲をやってくれて本当に感激しました。

17曲目は、ニューアルバムから"Free Girl Now"でした。彼らには珍しいモータウン調のドラムパターンを持つ曲です。そして、"You Wreck Me"。会場はノリノリです。そして最後は"American Girl"でした。イントロが聞こえた瞬間、会場はこの日一番の声援に包まれました。合衆国200年目の独立記念日に書かれたこの曲は、このライブが独立記念日の数日後に行われたこと、ボストンがアメリカ独立のきっかけを作った町であること、ボストン郊外のプリマスから入植が始まったことなどを考えると感慨深く、観客の大合唱も"She was an American girl"という部分でひときわ大きくなりました。僕はこの曲でTomはRickenbackerを弾いているとばかり思っていましたが、実際は違うんですね。この曲を最後に本編が終わりました。

メンバーが引っ込むと同時に、アンコールを求める声が波のように押し寄せましたが、日本のように手拍子をあわせるのでなく、名前を呼ぶ者、拍手する者、座席を叩く者(背もたれがプラスチック製なので良く響くのです)とまちまちです。そして数分後、彼らは再びステージに現れ、"Free Fallin'"を演奏し始めました。もちろん、サビでは大合唱です。「Ventura Blvd.」や「Mulholand」などL.A.の地名を織り込みながら歌われるこの曲は、teenagerなどファン層の底辺を拡大した曲であると聞いたことがありますが、確かに若いファンの反応が良かったようです。アンコール2曲目はThemのカバー曲"Gloria"でした。ここ数年のライブでよく演奏されていますが、間奏部分でかなり長いTomの語りが入ります。客席を煽ったり、笑わせたりと、観客席とのやりとりが多いのですが、英語が苦手な僕には、正直今ひとつ楽しめず残念でした。

そして、この日ラストとなるはずだった"Refugee"です。My Favorite Songsの一つであるこの曲は'86のBob Dylanとの来日時、大阪城ホールで聞いたことがありますが、今回は間奏も短くタイトな演奏で、それがかえって曲の良さを引き立たせたような気がします。そして、演奏が終わり、メンバーがファンに挨拶しようとステージ中央に集まり始めた時のこと。突然Tomが振り返り、メンバーにもう一曲やろうと呼びかけました。あわてて楽器が用意され、"Learning To Fly"がドラム抜きのアコースティック・ヴァージョンで演奏されました(Steve Ferroneは、ドラムの前に座って手拍子をとっていました)。コンサートが終了したのは11時過ぎでした。
翌10日はステージ向かって右側の一番端の席でしたが、ステージには20メートル、Tomには 30メートルくらいの距離でした。(map参照)

曲はアンコール最後の"Learning To Fly"が無かったことを除き前日と全く一緒で、日替わりメニューを期待していたのでちょっと残念でした。会場は前日と同様満員でしたが、この日は紙吹雪が舞うといった演出もありました。ただ、ノリは若干初日の方が良かったようです。コンサート終了後、駐車場へ急いでいると、出口前の道路が封鎖されていました。TP&HBが会場を出るためのものです。4、5台の大型バスに分乗してましたが、MikeとBenがファンに手を振っていました。

2日間を通じて感じたことですが、彼らはやっぱり実力派バンドです。これほど演奏が上手であるとは思いませんでした。そして彼らの曲の素晴らしさを再認識させられました。彼らはロックのすそ野全てに広がるような幅広いタイプの曲を持ち、その一曲一曲が白人音楽と黒人音楽が出会って生まれたロックン・ロール以降の歴史を振り返るようです。また、その一方で新たな境地を切り開いてきており、幅広いファン層を得ていることにも納得がいきます。音楽に対する誠実な態度やファンを大切にする姿勢も一貫しており、これも人気が衰えない理由でしょう。コンサートは2日間とも素晴らしい出来であったと思いますが、贅沢を言えば日替わりの曲があれば良かったのですが。個人的には"A Woman In Love (It's Not Me)"や"Rebels"を聞きたかった。また、昔の曲はStan Lynchにドラムを叩いてほしかったですね。

いずれにしても、はるばる日本から見に行って良かったと思います。それだけの価値のあるライブでした。今度は日本で、この最高のアメリカン・バンド Tom Petty and The Heartbreakersのライブを実現させ、ファンのみんなとこの感動を分かち合いたいものです。
Tweeter Center , 1999.7.9&10
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Jammin' Me
Runnin' Down A Dream
Breakdown
Swingin'
Don't Do Me Like That
I Don't Wanna Fight
Mary Jane's Last Dance
I Won't Back Down
Listen To Her Heart
It's Good To Be King
You Don't Know How It Feels
Penetrati on
Don't Come Around Here No More
Walls
Room At The Top
You Got Lucky
Free Girl Now
You Wreck Me
American Girl
〜 Encore 〜
Free Fallin'
Gloria
Refugee
Learning To Fly (July9のみ)