Live Report update: 1999. 11. 12


1999年 10月 15、16日 MGM Grand Garden Arena, Las Vegas & Hollywood Bowl, Hollywood
  Whole Lotta Tears Shigeyan
− はじめに −

Tom Petty & the Heartbreakers(以下トムさん達)のライヴを観るのは生まれて初めてです。この場を使ってその感動を書こうとも考えていましたが、そうすると他の皆さんと内容がダブることは必至のため、それについてはウェブサイト「While My Guitar Gently Burps」に掲載させてもらいました。もしよければ、併せてそちらをご覧になっていただければ嬉しいです。ただただ感動しながらも、ついつい楽器オタクの血が騒ぎ、いちいちどの曲で誰が何の楽器を使用したか、覚えている自分にビックリしています。ここでは、各々のメンバーに焦点を当て、それぞれの演奏ぶりを記してみました。
Scott Thurston

Las Vegasでは本当にビックリした。てっきりBenmontがステージ上の立ち位置を変更し、さらにギターへ転向したのかと思った。でも、もちろんそういうことはなく、Scottを Benmontに見間違えていただけだ。その位この二人は共通するルックスへと化してしてたのだった!最近オフィシャル・サイトに掲載されていたBenmontへのインタビューの中「いつもかっこいいですね」という質問に対し、Benmontは「Scottの真似をしてるだけさ」という趣旨の発言があった。うーん。確かにアタマ...(以下自粛)

Scott は、サポートという自らの立場をわきまえ決して前に出てくることはなく、ひたすらサポート職人としての役割を果たしていた。"Swingin'"のコーラス、"Free Girl Now"のギターソロのハモリなど、特に『Echo』の曲では彼の果たすパートがトムさん達には欠かせないものであることを再認識した。あと、ブルース・ハープ!"Swingin'"でハープが響き出した瞬間は震えが出て涙が止まらなかった。ついでに時間まで止まったかのような錯覚を覚えた。"Mary Jane's Last Dance" "You Don't Know How It Feels"でも、彼のハープがなければその魅力は半減すること必至だろう。
Steve Ferrone

自分はもともとSteveの大ファンである。彼がEric Claptonと共演した『24 Nights』はCDが擦り切れるほど(擦り切れないが)聴いたし、そのドラムは大名演だった。彼が在籍時のクラプトンのライヴも数回は見ている。しかし、彼がトムさん達に参加するようになってから、どうしても受け入れられない理由が2点あった。

第一に、脱退したStan Lynchのドラムが大好きだったということ。さりげなく重く、でもロックンロールになるとやたらとワンパク坊主になるStanのカッコ良さは今はもう味わえないのが悲しい。第二に、Steve Ferroneのようなシャープかつタイトなドラマーはトムさん達に合わないのでは?というミスマッチの問題である。実際、Steve参加後の海賊盤における"Jammin' Me""Mary Jane's Last Dance"など、脱退前のStanが大活躍していた曲では(悪い意味での)変貌ぶりに納得いかない気持ちが強かった。

確かに、今回のライブでも"Don't Do Me Like That"などで曲の一部ともなっているStanの名オカズが省略されていたのはやはり痛い。仕方がないので、Hollywoodではささやかな抵抗としてSteveの代わりに自分が口でドラムを「ドドッパン、ドドドドッ」などと奏でたが、多分 Steveの耳には届いていないことだろう。もっとも、ライヴ中はそれ以外の細かいことはさほど気にならなかった。やはり『Wildflowers』以降の作品ではSteveの音がすっかり定着していた。何より、楽しそうに叩いてた!クラプトンと叩くときはこんなにニコニコしてなかったぞ、オヤジ!
Tom Petty

Hollywoodでは「Tom Petty for President!」という叫び声が観客席より飛びまくっていたが、その気持ちはよく分かる!「Thanks!」という叫び声もあがっていたが、これも痛いくらいに良く分かる!トムさん、ありがとう!

歌の素晴らしさについては言うまでもないだろう。特に、ギター一本の弾き語りに近いアレンジの"I Won't Back Down" "Walls"では、そのエッセンスが最大限に凝縮され痛いほどに伝わってきた。一体どうしてこんなに素晴らしい曲を書けるのか?そして、こんなに歌声に心をこめることが出来るのか?極めつけは"Free Fallin'"だ。ギターとボーカルだけでウン万人の観客を狂わせ酔わせ、そして大合唱させる。これをステージから体験する気持ちというのは一体どういうものなのだろうか、トムさんと飲む機会があったら是非聞いてみたいものだ。

トムさんの作詞作曲および歌については、これまでも色々と語られているが、どういう訳か彼のギターの素晴らしさについて語った文章というのはあまり見かけられない。日頃からその状態を歯がゆく思ってはいたが、ライヴを通じていかにトムさんが素晴らしいギター・プレイヤーであるかを再認識した。

"Swingin'"のイントロの4小節は何なんだ!弾いているコードは、ギターを覚えたての初心者でもすぐにマスターできそうなものだ。しかし、そのリズムといったら!ルーズなのにタイトでリズミカル、何でそのように相矛盾するカッコ良さを、たった4小節の中に詰め込むことが出来るのか?Mikeが素晴らしい後奏を弾いた後は、トムさんがバトンタッチしてソロを弾くが、その力強いゴリゴリとしたピッキングから出されるソロは大胆かつ繊細である。

同じような意味で、"Mary Jane's Last Dance"のイントロのカッティング、ギターソロは音が出ただけで強烈な説得力が漂っていた。また、"Good To Be King"ではハモンド・オルガンに用いられるレスリー・スピーカーによるゆれゆれサウンドを使用、更なる彩りを加えていた。

トムさんは、「Toru Nittono」という日本人が作製したテレキャスター・タイプのギターをもっぱらメインに使用していた。その他、Gibson、Fender、Rickenbacker、Voxなどあらゆるギターを贅沢に用いていたが、この鮮やかな変化が、ヴィジュアル的にもインパクトを与えていたのは言うまでもないだろう。なかでも、"I Don't Wanna Fight"ではギブソン・フライングVを持っていたが、これがまたデビュー当時の勇姿とイメージがかぶり、さらに円熟した年輪が加わったかのような凄みを感じさせたのだ。
Mike Campbell

彼のことを文章にまとめようと思っても全然文章にならない。あ、してるか。でも、その位、Mikeは素晴らしいのだ!

両日ともオープニングではTomと共にギブソン・ファイアーバードで武装し、そのペアルックがカッコ良いったらありゃしない。アンプはVOX AC-30。生々しい音がこれまたリアルで、ソロを弾くとその一音一音がこちらの神経に突き刺さってくるほどの説得力をもって迫ってきたのだ。その後、GibsonやらFenderやらGretschやらHagstrom(多分?)やら、あらゆるギターを持ち替え、結局は表のように計10本を使い分けていた。

しかし、一番多く使用していたのはこのような値段が張るようなヴィンテージ・ギターではなく、茶色のテレキャスター・タイプのギターだったのが興味深いところである (ギタリスト用解説: このテレキャスはヘッドが昔のPeaveyのそれと酷似していて、Peavey製の可能性も否定出来ない。通常のテレキャス同様2ピックアップだが、いずれもバータイプで、ハムバッキング的な太い音を持ちながらもシングルコイルのシャープさを兼ね合わせ持っているギターだった)。

"Swingin'"のギターソロなんて単純この上なく、たいして難しいことなどしていない。でも何故こんなにカッコ良いんだ!ソロが終わって歌に入った直後はハーモニックスを鳴らしながらギブソンSGを軽々と持ち上げビブラートをかけたが、これがまた決まってるのだ。そして、曲の後奏では微妙なトレモロと音の揺れを加え、すでにしこたま感じていた情感をさらにhigher placeへと持ち上げてくれる...

こんなカッコイイことをしながら、必殺あほあほロックンロール"I Don't Wanna Fight"では味のあるボーカルで思いっきり吠えた。微笑ましい。"Good To Be King"ではメーカー不詳(どなたかご存知でしたら教えて下さい!)のダブルネック・ギターを抱え、原曲に入っていたストリングスを補うどころでなく、さらに優れたものへと変えていった。途中に入るギター・バトルでは、最初は耳元でささやくように情熱的ながらも優しく迫る。そして、その情熱は次第にエスカレートし、優しさの中にも激しさが徐々に加わり、最後にはエクスタシーの域へと達する。あ〜〜官能的...ただただ攻め上手である。

そして、"Don't Come Around Here No More"を忘れてはいけない。Coralエレクトリック・シタールに持ち替え、ビヨンビヨンした独特の音を用いてフリーなギターソロを弾き、この曲の幕開けを演出...その間にトムさんがステージに向かって右側にある宝箱へと向かい、それを開き、帽子を取り出した。間奏の後の歌メロでは、一旦ボリュームを落としてトムさんが皆をゆっくりと説得するかのように歌いかけたが、その間に Mikeは再びエレキへと持ち替え、ワウペダルを踏み、リズムがアップテンポのロックンロールへと変化した。その瞬間、涙がボロボロと流れた...止まるところを知らなかった...どうしてだ?!
Howie Epstein

今年初頭のFillmoreツアー、および『Echo』発売の頃には、風貌のあまりにも急速な変化、やつれ具合に一部で健康不良説が流れたHowie。実際、その後の映像を見ても以前のような元気さは感じられず、振り子のような独特かつリズミカルな体の動きもなく、非常に気がかりだった。

しかし、彼が演奏しているのを見た瞬間、その懸念は吹っ飛んだ。かっこ良すぎるではないか!1曲目の"Runnin' Down A Dream"のベースからしてウネるウネる!!原曲の単調なベースライン(トムさん、ごめんなさい)なんて踏み潰してしまうくらい軽快なのに重圧な独特のグルーヴで観客一同をもて遊ぶ。ジャズ・ベース・タイプの黒いSadowskyベースを駆使して、アドリブのフレーズをジャンジャンバリバリ繰り広げ、バンドを支えながらも自由奔放この上ない。

"Swingin'" "Good To Be King" "You Don't Know How It Feels"などでは遊びまくりもう大変。そして、トムさんの声に小判鮫のようにひっつくハーモニー・ボーカル!これがまた美し過ぎる。"Mary Jane's Last Dance"の「フウーゥウーウーー」、"Listen To Her Heart"のトムさんとの二人三脚、"You Wreck Me"のサビでの盛り上げハーモニー!振り子の具合もすっかり復活し、さらにチラッとTomやSteve を向き、ニコっとはにかむ。自分らが創り出すビートに自ら乗りながら、さらに最高のビートを創り上げる、という相乗作用。おそろしい程にカッコイイ!
Benmont Tench

おそらく、トムさん達のなかでは最も堅実、かつ細かそうなBenmont。実際、ライブを見終わった後、Benmontネタで相当盛り上がり、「ツアーが終わった次の日からセッションしてそう」「時間に正確そう」「貯金ためてそう」「旅行するときにアタッシュケース持ってそう」などなど、無責任に色々とウワサしてしまったほどである。

彼の腕についてはもう言うまでもないだろう。地味にグランドピアノの前に座り、ごく必要最小限のいぶし銀プレイを行ってるかと思いきや、次の瞬間むちゃくちゃスゴいことを涼しい顔でやってのけたりする。ピアノで涙モノのフレーズを弾いているかと思いきや、もう片手でハモンド・オルガンの至上な響きを聴かせたり...

アコースティック調の"I Won't Back Down"では、ゆったりながら重みのあるハモンド・オルガンにてソロを奏でていた。"Don't Come Around Here No More"では原曲のシタールの早いバッキングを的確に行い、"You Don't Know How It Feels"ではコロコロっと転がるように軽快なエレクトリック・ピアノのオカズを加えていた。ツアーパンフに掲載されている使用機材をよく見たら、「DX-7 (much hated)」との記載があったが、確かに"Don't Come Around Here No More"と"You Got Lucky"では昔懐かし「Yamaha DX-7」というシンセを効果的に使用していた.

そんな彼でも、Hollywoodの"You Got Lucky"ではハモンドのパートをトチってしまった。完全無欠で時間にうるさそうな(ホントか?)彼も人間なんだ、ということを認識しちょっと一安心。
以上、各々のメンバーについて、印象に残った点をプレイヤーとしての視点から記してみた。改めて痛感したのは、彼らのライヴ・バンドとしての実力および底力である。フロリダ在住時のMudcrutchから始まり、さらに1976年のTom Petty and the Heartbreakers結成以来、ひたすらライブを続け、メンバー達がのべ数百枚のセッションの課外活動に参加している位なので、そんなことは改めて挙げることでもないが、ただただ素晴らしすぎる。だからといって、各メンバーが出しゃばることは一切なく、必要最小限な音のみを繰り広げる。そうして出された一音の説得力のスゴさ、これが言葉に出来ないくらいなのだ。とにもかくにも、一刻も早くこの素晴らしいライヴを日本で見たいものだ!

〜Tom Petty and Mike Campbell 使用ギター〜

song Tom Petty Mike Campbell
Jammin' Me Gibson Firebird (sunburst) Gibson Firebird (sunburst)
Runnin' Down A Dream Gibson Firebird (sunburst) Gibson Firebird (sunburst)
Breakdown Gibson ES-335 (cherry) Fender Telecaster (white)
Swingin' Fender Stratocaster (white) Gibson SG Standard (cherry)
Don't Do Me Like That custom Telecaster model Gretsch Firebird (red)
I Don't Wanna Fight Gibson Flying V (corina) Hagstrom (red)
Mary Jane's Last Dance Gibson SG (white) Gibson SG Standard (cherry)
I Won't Back Down Gibson J-200
Listen To Her Heart custom Telecaster model Telecaster type (brown)
It's Good To Be King custom Telecaster model ダブルネック・ギター
(メーカー不詳, red)
You Don't Know How It Feels Fender Stratocaster (white) Telecaster type (brown)
Penetration〜 Apache Fender Jaguar (white)
Don't Come Around Here
No More
Rickenbacker custom
320/1997 model (brown) (1カポ)
Coral electric sitar
〜Telecaster type (brown)
Walls Gibson J-200(5カポ) Telecaster type (brown)
You Got Lucky custom Telecaster model Fender Jaguar (white)
Free Girl Now custom Telecaster model Fender Telecaster (white)
You Wreck Me Fender Telecaster
(ナチュラル,半音上げチューニング)
Telecaster type (brown) (1カポ)
Free Fallin' Rickenbacker custom
320/1997 model (brown) (1カポ)
ダブルネック・ギター
(メーカー不詳, red)
Gloria Gibson ES-335 (cherry) Gibson ES-335 (cherry)
American Girl VOX Mark IV Phantom W (green) Telecaster type (brown)

間違っている可能性は十分にありますが、その旨ご了承下さい。
− Special Thanks −
Michiko, for kindly giving me a chance to go see the concerts; Kats, Mari, Hide, Reiku, Mitz, and everyone at the Burps; Markun and everyone at the Smogs; the Croweheads; Yufu; Ayumi, Tatsu, and Kuri; Chizuyan; the wonderful folks of Heartbreaker's Japan Party (TOSHI, MAKOTO, and Sammy) and Team Heartbreaker for giving us the opportunity; Buchi, for the wonderful time and we apologize for leaving you alone in OUT IN THE COLD!
And needless to say, Mayu-A, Setsuko (Mayu-B), and Jiro (Mayu-C) for sharing a whole lotta laughter and tears in this wonderful trip! You've been great!
Las Vegas & Hollywood