Rock and Roll Hall of Fame

1976年のレコード・デビューから25年、TP&HB が Rock and Roll Hall of Fame(ロックの殿堂)入り

2002年の「ロックの殿堂」入りの授賞式が行なわれました。
今回の授賞はTP&HBとして歴代のメンバー、Tom Petty、Mike Campbell、Benmont Tench、Howie Epstein、Stan Lynch、Ron Blairが対象。授賞式が近づくにつれ、辞めていった2人は出席するのか?というのが最大の関心でした。Stan が脱退した1994年秋からは7年半の時間が流れています。そして、その日… 嬉しいことに全員が顔を揃えました。6人の男たちが居並ぶ様子を見てドキドキしたのは私だけではないはず。そこには実に晴れやかな顔がありました。

Rock and Roll Hall of Fame サイトに各種情報や授賞式の映像があります

Award ceremony

date 2002. 3. 18
place Waldorf Astoria, NYC

授賞式の流れ

セレモニーは7組のアーチストの授賞と演奏がバラバラに行われる進行でちょっと慌しい印象。Jewel → Brenda Lee、Eddie Vedder → Ramones、Brian Setzer → Chet Atkins、Anthony Keidis → Talking Heads などなど。なるほど、というアーチストがプレゼンターとして紹介役を務めました。

(P=演奏、I=授賞式、人名はプレゼンター)
Isaac Hayes (P) → Brenda Lee (I: Jewel) → Ramones (I: Eddie Vedder) → Gene Pitney (P) → Jim Stewart’s (I) → TP&HB(I: Jakob Dylan) → Chet Atkins (P: Brian Setzer) → Chet Atkins (I: Brian Setzer & Marty Stewart) → TP&HB(P) → Gene Pitney (I: Darlene Love) → Ramones (P: Green Day) → Isaac Hayes (I: Alicia Keyes) → Talking Heads (I: Anthony Keidis) → Talking Heads (P)

Jakob Dylan’s Speech

TP&HBへのプレゼンターは、The Wallflowers の Jakob Dylan。父親である Bob DylanとTP&HBの関係を考えると非常に感慨深く、そのスピーチも実に感動的なものでした。

初めて TP&HB と一緒に過ごしたのは1986年(*)でした。僕が(父の)ツアーに同行したのはそれが最初ではありませんが、本当に興奮したのは初めてでした。僕は既に彼らの大ファンで、ステージの袖から全てを見逃さないようにしようという大計画を持っていました。あの夏は僕に多大な影響を与えました。Tom の2人の娘さんと一緒に座りながら、こう考えたのを思い出します。「君達のお父さんは Tom Petty なんだよ!スゴイよ!それってすごく不思議だよ!」

Tom が登場するまで、多くのシンガー・ソングライターが「新しい Dylan」というレッテルにもがいてきました。それは多くの人達をダメにしました。それを乗り越えるには他の誰もが持っていない視点を見せるしかありませんでしたが、多くの人たちはそうしませんでした。しかし、Tom の視点はあまりにも強力で、僕が登場した頃には僕が「新しい Petty」と呼ばれるようになっていました。

でも、これはかなり嬉しい意見です。僕が自分のグループを結成した時、僕は Heartbreakers のように編成しました。ギター2本に、ベース、ドラム、そして (Hammond)B3/ピアノ。今、この編成は古臭いと言う人もいますが、僕がそう感じたことは一度もありません。僕にとって、それこそがロックンロールの始まりであると同時に、結局はそこに帰着するからです。加えたい音があればそのために充分な余裕があるし、これ以上(の演奏者)は決して必要ないからです。ロックにトレンドや流行りがあることは確かですが、実際はその正反対だということを TP&HB は教えてくれました。ロックとは時代を超越したものなのです。

TP&HB は1976年に最初のレコードを創りました。それはみんなが「ロックンロールは死んだ」なんて言ってた頃の話です。今でもそれを言う人はいて、ラジオを聴いたり音楽チャンネルを見れば確かにそう感じるかもしれません。でも、それはありえません。Heartbreakers がスタジオにいる限りは。ロックは元気だ、ということを信じられるのですから。

彼らはアメリカの最も偉大なロック・グループの一つです。彼らは(伝統を)引継ぎ、長い間にわたり誇り高く持ち続け、それを成した後にはそこにいた分だけその音楽を強力にして(次の世代へ)受け渡していくのです。こんなことは願っても出来るものではありません。

Tom はあなたが忘れられないような曲を書いてきました。 “American Girl”、”Refugee”、そして”Free Fallin'”。でも、Tomのスゴイところは25年経った今でも、彼が次に書く曲こそが最も素晴らしい曲だろうということです。彼の曲全てには、Tom 特有の魂が満ち溢れています。彼の最も印象的な一節はこんな感じです。
「Think of me what you will, I’ve got a little space to fill (自分は何ができるのかって考えてみるけど、選択の余地は僅かしかない)」
25年間レコードを創り続けてきた人から出てくる言葉にしては控えめですが、まさに私たち多くがこうしたいと願っているのではないでしょうか。

良いロックンロール・バンドはステージに上がり、言いたいことを言い、そして去っていきます。しかし、一番大切なことは彼らの持ち時間をどう満たすかなのです。TP&HB は、永遠に残る楽曲、そしていつまでも朽ちないレコードで、その時間を満たしました。彼らをロックンロールの殿堂に招くことができるのはとても光栄です。みなさん、Tom Petty and the Hearbreakers です。

The first time I spent time with Tom Petty and the Heartbreakers was in 1986. It was not the first time I had tagged along on tour, but it was the first time I was really excited. I was already a huge fan and I had big plans to watch every minute from the side of the stage. That summer had a huge effect on me. I remember sitting with Tom’s two daughters thinking, “Your dad is Tom Petty!— That’s so cool! That must be so weird!”

Before Tom came along a lot of singer/songwriters were stuck with the label, “a new Dylan.” And it ruined a lot of people. The only way to overcome was to show you had a vision unlike anyone else. Most of them didn’t. But Tom’s vision was so strong that by the time I came along I got called “the new Petty.”

But that’s a fair rap. When I was putting my group together, I set it up like the Heartbreakers. Two guitars, bass, drums, and a B3/piano player. Today people call that lineup retro, but I never saw it that way. To me, that’s where rock and roll starts, and that’s where it always gets back to. There’s plenty of room for whatever else you want to throw in, but you never NEED more than that. Tom Petty and the Heartbreakers made it clear that while rock will have its trends and go through fads, it’s really about the opposite. It’s about being timeless. 

Tom Petty and the Heartbreakers made their first record in 1976. It was another one of those times that people were saying that rock and roll was dead. They say that today too, and if you listen to the radio or watch the music channels, you might agree. But it can’t be. Not if the Heartbreakers are in the studio. You can believe that rock is doing fine. 

They truly are one of the great American rock groups. They picked up the torch and they’ve held it proudly for a long time and when they’re done, they’ll pass the music along stronger for having been there. That’s the most anyone can hope to do.

Tom has written songs you will never forget. From “American Girl” to “Refugee” to “Free Fallin’.” And what is rare with Petty is that after 25 years, his next song may be his best one yet. All of his songs are bursting with Tom’s unique spirit. One of his most inspiring lines, “Think of me what you will, I’ve got a little space to fill.” While humbling, coming from a guy who’s been making records for 25 years, it is exactly what a lot of us are hoping to do. 

A great rock & roll band comes on stage, says what it has to say, and is gone. What matters most is how they fill the time they’ve got. Tom Petty and the Heartbreakers have filled their time with songs that will last forever and records that will never go out of style. It is my great pleasure to welcome them into the Rock and Roll Hall of Fame. Ladies and Gentlemen, Tom Petty and the Heartbreakers.

*)1986年:この時、Jakobは16-7才でした。ちなみに、TPの娘2人はそれぞれ10才、5才くらいだったはずです。

HB’s Speech

Jakob の紹介を受けて、TP&HB のメンバー全員が一言ずつ挨拶をしました(Mike、Benmont、Howie、Ron、Stan、Tom の順)。Mikeは「Denny Cordell、George Harrison、家族」に感謝を表し、Howie は「いつまでたっても新人扱いされる」とのジョークで笑わせたそうです。

TP’s Speech


そして最後は TP が締めくくりました。TP はあらゆる関係者に感謝を捧げ、スタンディング・オヴェーションを受けていました。
以下、ごく一部です。

我々がグループとして選ばれたことは本当に嬉しいよ。だって、Tom Petty and the Heartbreakers は、アメリカのなかでも最高のバンドなんだからね。彼らは僕の家族だ。車、飛行機、楽屋の裏側で… みんなで大きく成長し たんだよ。

今ここを見回すと、知ってる人達の顔が沢山見える。この音楽のために全ての時間と情熱を費やしてくれた人達だ。自由を与えてくれたロックン・ ロールに感謝を捧げるよ。最高の人生にしてくれたファンのみんな、そして神に感謝している。神の恵みがありますように。本当にありがとう。 勿論、この上なく愛している妻 Dana には特に感謝してるよ。

I’m very proud that we’re being inducted as a group, as Tom Petty and the Heartbreakers, ’cause they’re the best f—n’ band in America. They are my family. We all have grown into manhood together, in the back of cars and planes and dressing rooms.

Live Performance

授賞式の後に行なわれたTP&HBによる演奏は、”Mary Jane’s Last Dance”と”American Girl”の2曲。

“Mary Jane’s…”はTP、Mike、Benmont、Stan、Howie というラインナップ、続く”American Girl”ではベースを Howie から Ron にスイッチしての演奏。このメンバーが再び同じステ-ジに立って演奏する姿を見ることができたのですから、ファンとしても本当に感無量です。

授賞式は3月20日にVH-1で放映されましたが、TP&HBの演奏は “American Girl” 1曲のみのオンエアでした。


オリジナル・メンバーでの演奏に関して、TPは次のように語っています。
「バンドを復活させるのは本当に簡単だったよ。まるで丸太が転がるようにね。簡単なリハーサルをやっただけなんだけど、何も変わってなかったんだよ。」
「まさに、第1期の Heartbreakers ヴァージョンだったね。とにかく楽しかったよ。」

また、Stanは次のように心境を述べています。
「授賞式はある意味、幕引きの(儀式の)ようなものだったね。俺は彼らみんなのことが本当に大好きだよ。」

「ロックの殿堂」入りで、名実ともに偉大なロックン・ロール・バンドの仲間入りを果たしたTP&HB。でも、(Jakobも言っているように)まだまだこの先、この次の作品が楽しみな「今を生きる」バンドなのです。

授賞までの流れ(各種ニュースより抜粋)

2001. 9. 16

2002年の Rock’n’Roll Hall of Fame にTP&HBがノミネートされました。殿堂入りの資格はレコード・デビューから25年を経過したアーチストに与えられますが、1976年にデビューしたTP&HBは資格を得てすぐのノミネート。殿堂入りは投票によって決められます。1年目での勝抜けはなるでしょうか。大いに期待されるところです。

2001. 12. 14

TP&HBの「ロックの殿堂」入りが決定しました。授賞記念セレモニーは2002年3月18日にNYにて行なわれます。
この他の授賞者(class of 2002)は、the Ramones、Talking Heads、Issac Hayes、Gene Pitney、Brenda Lee、Jim Stewart (non-performer)、Chet Atkins (side-men)。

2002. 3

今回の授賞に関して、TPは次のように語っています。
「これまで表彰なんかに興味を持つことはなかったけど、もしロックン・ ロール・バンドをやってたら、これは貰える最高の賞だと思うよ。だから、この上なく嬉しいよ。投票してくれたみんなにも感謝したいよ。 これは人気投票じゃなくて、作品に対する評価だからね。」
「自分の人生について、これまで考えたことはなかったけど… すごく良い人生だね。とても上手くいってるよ。幸せだね。」