出発前に、Fillmore のHPで毎晩のセット・リストやオープニング・アクトをチェックした時、1月31日と2月1日のオープニング・アクトは発表されていませんでした。正直なところ、TP&HB のことしか頭になかったので、「オープニングなんてどうでもいい」という気持ちでした。だから、そのことはすっかり忘れたまま、1月31日を迎えた訳です。
開場からライヴが始まるまでの長い時間(実際は1時間30分くらい)、Fillmore のフロアに座り込んでじっと待っている時のこと。なぜかふと、オープニング・アクトのことが気になってきました。そこで私の頭の中にひとつの名前が浮かびました。それは胸騒ぎとともに、だんだん強くなります。不思議な予感でした。(TPとの関係からそれはありえない話ではないのですが。)
20時、ステージが慌ただしくなって、前方からどよめきが起こってきました。見上げるとそこには、TP がいました。待ち焦がれた瞬間… 初めて見る実物の TP…(言葉にならない)… 落ち着かなくてはと深呼吸。でも次の瞬間、さらに息が止まるかと思いました。TP のとなりに立っているのは、紛れもなく、Roger McGuinn でした。
予感的中です。そこには、TP&HB と同じくらい見たかったRoger McGuinn がいます。20回あるライヴのたまたま私が選んだ日に Roger が出演してくれる(それも2回も)、なんて偶然&ラッキーなのでしょう。もしかすると、私はこの時、一生分のラッキーを使い果たしてしまったのかもしれませんが、まあ、それでも良いでしょう。
Roger はアコースティックの12弦ギターを手にしていました。『Back From Rio』のツアー以降、彼がアコースティック12弦を抱え、弾き語りライヴのツアーを続けているという話は後から知りました。この時のステージはその短縮版でした。彼自身のヒストリーを大切な曲に載せて語るというスタイルはそのままに。
あれから随分と時間が経ってしまったため、残念ながらその日、Roger が演奏した曲目を正確には覚えていません。私の手元のメモには次の曲名があります(順番は適当です)。
- My Back Pages
- Heartbreak Hotel
- Gate Of Horn
- Chestnut Mare
- Bells Of Rhymney
- Turn! Turn! Turn!
- Mr. Tambourine Man
- Eight Miles High
- Wild Mountain Thyme
- Geneとの初期の共作品(→”You Showed Me”かもしれないし違うかもしれない)
- New Song(→”May The Road Rise”)
約40分のライヴでした。内容的には、1996年発売の『Live From Mars』を思い浮かべてもらえば良いと思います。それぞれの曲と自身のつながりを語り、演奏する… Roger が言っているのですが、この一連のライヴはまさに「Autobiography」なのです。R&Rとの出会い、フォーク・ミュージシャンの時代、そして The Byrds 結成。”Mr. Tambourine Man”の Byrds ヴァージョンの誕生(これって Roger のネタ?と思ってしまいます)から、数々の思い出深い Byrds ナンバーまで。
Rogerは(この時、54歳でしたが)とても若々しく見えました。単純に年を経てもカッコ悪くなっていないのがすごく嬉しかったものです。小さい会場だったせいもあって、一層、Roger の声とギターが力強く、そして美しく感じられました。思えば私が生まれる前にスタートして、激動の時代を超えて、こうして今も歌い続けている、素敵な人生ですね。