Traveling Wilburys:History

Wilbury Twist

幻の Traveling Wilburys Vol. 2 とは?

1990年2月8日、Del Shannon が猟銃自殺を図り亡くなるという、ショッキングな事件が起こりました。享年53歳。前年から続けられてきたアルバムの制作も終盤にかかり、新たなキャリアを出発させようかという矢先の出来事でした。

『Traveling Wilburys Vol. 3』がリリースされた時から現在まで、Del が参加する『Traveling Wilburys Vol. 2』の存在が様々な形で語られてきました。Del Shannon は Wilbury だったのでしょうか?Del は TP の『Full Moon Fever』、Jeff の『Armchair Theatre』に参加していますし、また彼ら2人も Del の遺作となった『Rock On!』の制作に深く関わっています。Wilburys に近い人物だった事は疑う余地はありません。

それでは『Vol. 2 』は存在したのでしょうか?しかし、2枚目のアルバムに『Vol.3』という名称を冠していたという事だけで、『Vol. 2』の存在を正当化する意見がほとんどでした。それに乗じて、海賊盤業者が様々な知恵をめぐらせて、さも本当に存在したかのような『Vol. 2』のニセモノを作り出し続けてきました。

Traveling Wilburys の曲の中で純粋に未発表といえるのは “Maxine” “Like A Ship”の2曲のみです。ほとんどの『Vol. 2』は既存の曲の「別テイク」「別ミックス」、もしくは未CD化のTraveling Wilburys バージョンの”Runaway” (Del Shannon の曲。ボーカルは Jeff)や Wilburys のメンバーが参加している各々のソロ・アルバムに収録されていた曲などで構成されています。

89年の Wilbury たちの行動を調べてみる限り、一同に会する時間を取るのはほとんど無理な状況だったことが浮かび上がってきます。TP と Dylan は各々のツアー、George は様々なセッションとベスト・アルバムの制作並びに休暇、Jeff は自分のソロ・アルバムの制作にかかりっきりと、とても新たな Wilburys のレコーディングに入れる感じではありませんでした。

とはいえ、絶対に『Vol.2』が存在しないとも言えません(笑)。むしろ本当の『Vol.2』という物が、どこかに存在しているのではと考えた方がワクワクしてきます。真実は Wilbury たちだけが知っているのですが、みなさんはどう思われるでしょうか。

TPにとっての Traveling Wilburys

TPは、Traveling Wilburys を振り返り、こう語っています。

「他人のスタイルから学ぶものは多かったね。皆でアイデアを出し合って曲を作る。あんな事は先にも後にもあの時だけだよ。」

「Wilburys の面々というのは Wilburys が結成される遥か昔からの仲間だったんだよ。だから、あの面子でツルみながら楽しい時間を過ごすという下地は、あのアルバムを作る前からとうに出来上がってたんだ。それに、その下地がなかったら、そもそもあのレコード自体、存在してなかったはずだよ。あの時は、そういう人間味溢れるものを作りたかった訳なんだ。」

「Wilburys って噂だらけだからな(笑)。俺たちにはツアーをする用意はなかった。Wilburys は Traveling だったけど、Touring のバンドじゃなかったんだよ。」

TP は Traveling Wilburys に加わることで「音楽本来の楽しさを再度認識した」だけでなく、欠くことのできない深い絆を得ることができたのではないでしょうか。敬愛する先達とのレコーディングは、TPの新たな一面を開いていきました。一番若いメンバーであるということも幸いしたでしょう。常に自分が先頭で物事を進めていかなければならなかった立場から、「兄貴たち」に囲まれて好きなように振る舞うことのできる自由さを謳歌したのだと思います。

レコード会社との訴訟、ツアーの重圧、有名人として注目を浴びる不自由さ、思うままに進まないレコーディングに対する苛立ち、怪我のための否応無しの休息などなど… そんな何年間かを送ってきたTPにとって、Jeff との作業、そして Wilburys の面々と過ごす日々は、Elvis に憧れた61年の夏、The Beatles に心を奪われた64年の Ed Sullivan Show、そんな少年の頃の純粋な楽しさを思い出したのかもしれません。