Live Report: Tour 2008(6/17, 18/2008)

Straight Into Darkness

reported by Mayu 

  • date / place 2008. 6. 17 Madison Square Garden(New York, NY) / 2008. 6. 18 Prudential Center(Newark, NA)
  • post date 2008. 7. 21

2008年のサマーツアーはニューヨーク&ニューアークに出かけてきました。昨年はツアーがありませんでしたから、二年ぶりとなります。(スーパーボウル出演にあわせて)発表が1月末という異例の早さに、「半年先のことなど決められないよ~」などと言ってる場合でもなく、一番リーズナブルと思われる場所を選びました。

今回も Highway Companion Club(HCC)の先行発売でチケットを購入。前回のような超ラッキーはつかめなかったものの、Madison Square Garden (MSG)、Prudential Center (PC)とも、フロアの15列目前後とまずまずの席を購入することができました。ともに狙い通りのステージ向かって左側ブロック。HCCがなかったら…「15列目で不満」などという罰当たりな贅沢は言えなかったでしょうに(笑)。実のところ、PCのチケットで一桁台の座席をつかみながらも購入し損ねたのが悔やまれるのでした。


さて、1日目のMSGで最初に聞いたのは、今回のツアーで1曲目にきている「You Wreck Me」。通常はエンディングかアンコールでの盛り上げ曲です。彼らの場合、時々こういう手法を使っていますが(Jammin’ Me や American Girl をトップに持ってきたこともあり)、今回の抜擢はちょっと今イチに感じました。もちろん、私は「You Wreck Me」が好きなのですけど、オープニングからバンドのテンションが上がっていなかったような感じで、非常にもたついている印象が残りました。

その後の演奏は悪くはなかったと思う(決して良かったとも思わない)のですが、観る側としては今一つ乗りきれない部分もありました。もちろん、彼らの演奏に心身を預けている状況は心地良いものではありますが、定番化した流れの中にあるというのが分かるとどこか引いてしまう部分もあります。ライヴ観戦を重ねるごとに欲深くなってきているせいなのかもしれませんし、自身の集中力が以前ほど続かないせいなのかもしれません(笑)。

集中力を保つのが難しい理由として、周囲の環境というのも上げられます。アメリカでのライヴ観戦には様々な障害がつきもので、良好な環境を得られるかどうかは「運」次第です。残念ながら、今回はNGでした。二列前にいたカップルはどちらもスーパーサイズ、しかもくっついて立つので横幅二倍。疲れを知らない二人によって私の視界は大幅にブロックされました。外的要因で集中力を阻害されてしまうとは、それだけ気力が足りていないのかもしれませんが。

この夜の演奏曲の中で私が気に入ったのは、「End Of The Line」と「Saving Grace」でした。前者は今ツアーからレパートリー入りし、後者はアレンジをガラッと変えてきましたので、非常に新鮮でした。「Saving Grace」に至ってはイントロでは何の曲だかサッパリ分からず、「新しいカヴァー曲?」などと思ったほど。この軽妙なアレンジが決定版(最高傑作)だとは思いませんので、これも長く続けると飽きが来るものと思われますが、変化していく姿勢が個人的には嬉しかったです。

また、観たかった Steve Winwood との共演も実現しました。TP&HBのセット途中に Winwood を招き入れる形ですが、主役は Winwood です。HBはもちろん、TPも脇役に徹している感じで、Winwood の伸びやかな声が気持ち良く響いていました。この共演スタイルは毎公演の定番とはなっておらず、2~3公演に1回くらいの割合で実現していますから、観られてラッキーでした。

しかも、共演で2曲が TP&HB のセットに移行したため、Winwood のセットで替わって演奏されたのが「Had to Cry Today」。Winwood 関連曲で私の一番好きな曲を聞くことができたのもラッキーでした。

会場は決して彼らの熱心なファンばかりではありませんが、大いに盛り上がっていました。曲間では何度も「Petty、Petty…」のコールが沸いていました。この「Petty」コール、ライヴでは時々遭遇するのですが、アメリカ中の定番という訳ではないのです。自然に大発生する時もあれば、全く起きない時もあり(翌日のPCではNYCから近いにも関わらず、ほとんど起きませんでした)、大いに謎です。


続いて、翌日のPC。オープニングの Winwood のセットで、昨日共演した2曲が早々に演奏されたことで、本日の共演がないことがハッキリしました。とすると、TP&HB のセットは2曲新たに加えないといけない… と期待が高まります。とはいえ、結果は惨敗??でした。前日より演奏曲数が3曲も減り、入れ替わったのも「Listen to Her Heart」だけ… 何とも残念でした。

演奏自体は、前日のMSGよりは良かったように思います。私は単なるミーハーファンなので、特に根拠はありません。これは今回の彼らの演奏に耳が慣れたから、という部分もあるかもしれません。

ただ、途中でTPが珍しくタバコを吸いはじめ、それは曲間で5本くらい続きました。ステージで吸っているのは久々に見ましたし、TPは(一応)繊細なタイプなので、そういった行動を目にするとこちらは不安に思ってしまいます。あまり調子も良くないようだし、大丈夫だろうかと。同時に、タバコに逃げ道を求めるかのような行為に軽い怒りも覚えました。

とはいえ、この日、私は数曲で TP&HB と対峙することができました。よく覚えているのは、「I Won’t Back Down」と「Learning To Fly」です。「IWBD」では、ひたすらTPだけを見つめてその歌声に耳を傾けました。それは私とTPだけの世界で誰も入って来ない空間があるかのようでした。この曲は歌詞の持つメッセージと厳かな佇まいから、割とライヴでも感情移入することが多く、その度に心を揺さぶられます。

「Learning to Fly」は正直に言うと、今のライヴヴァージョンがそれほど好きではありません。TPは後半のコーラス部分で決まって観客を歌わせるのですが、その定番化された状況が嫌なのです。もちろん、感動的なシーンだという方は非常に多いですから、そんな風に感じる自分は相当に心が歪んでいるのでしょう。

今回もいつものように観客に「I’m learning to fly, but I ain’t got wing …」の部分を歌わせて、TP自身はその隙間をうめるように「Flying over my Trouble, Flying over my Sorrow …」などと歌っていきました。通常は最後に「Yes, I Will (Do)」で締めることが多いように思いますが、今回は少しだけ違って、TPは「Yes, You Do. Yes, You Do. …」と歌っていました(そう私には聞こえました)。その瞬間、「You Can Do」でも「You Will Do」でもなく、「You Do」だったのがなぜか心に留まりました。「つべこべ言わずに、ただやれば良い」… そんな風に言われたように感じていました。完全にコジ付けですけどね。

こういう特別な瞬間を得るために、私は彼らのライヴを観続けているのかもしれません。極めて個人的、主観的な要素に他なりませんが、私自身が彼らのファンであり続けるためには大切な感覚なのだと思っています。


二年ぶりの彼らのライヴですから、それなりに楽しむことはできました。ただ、具体的には説明しにくいですが、彼らの演奏が雑に聞こえる場面も多々あり、どちらかというと心配になってライヴを観ていました。

前回(2006年9月)のライヴ・レポートで私はTPの動きを「操り(操られ)人形」と形容しています。一方、Mike は絶好調であった旨も記しています。今回のライヴでの印象はどうかというと、TPの操られているような表情は若干弱まり、自然体に近付いた(戻った)気がします。とはいえ、以前のような圧倒的なパワーは感じられませんでした。

Mike に関してはその演奏と振る舞いに疑問が残りました。「演奏が雑に聞こえた」理由のほとんどは彼にあると思っています。何かがおかしい… Mike に対してこんな風に感じたのは初めてです。これはかなり主観的なものなのですが、釈然としないまま自分の中に残っています。

最後にもう一つ(苦言です)。私の場合、コンスタントにライヴを観ていることもあって、どんな曲目が演奏されるかという興味が大きなウエイトを占めます。残念ながら、ここ数年の演奏曲目は固定化してしまい、正直ワクワクさせられることがありません。そういった指摘も強まっていて、ツアー前にはTP自ら「演奏曲目をガラっと変え、ライヴ毎に入れ替えて演奏する」旨の発言をしていました。確かに前回ツアーとはラインナップが違いますから、演奏曲目の入れ替えも若干はありました。

でも、TP発言によって期待したほどには変化がありませんでした。はじめの数公演は「Straight Into Darkness」「Rebels」「Spike」などの珍しい曲も演奏されていましたので、このままいけばライヴ初体験の曲目がたっぷり聴けるかもと淡い期待を持っていました。とはいえ、甘かった。1ヶ月も経たないうちに、演奏曲は元通りの固定化されたセットになってしまいました。

現在、彼らはキャパシティ1~2万人程度の大きな会場を使ったツアーをしています。彼らの人気・実力からいくと、それは当然です。とはいえ、そこに集まる人々は決して彼らの熱心なファンばかりではありません。確かに、アメリカ本国ではTP&HBは人気があります。でも、それはTP&HBだけが人気があることを意味しません。つまり、アメリカの人々は好みの音楽を演奏するバンドが好きな訳で、その中の一つがTP&HBなのです。会場に集まる人々の多くは『Greatest Hits』などに収録されている曲は大好きですけど、それ以上のものは求めていません。

「Straight Into Darkness」「Rebels」「Spike」が熱心なファンに熱烈に歓迎されたとしても、それ以外の観客には今イチ受けが悪く、彼らは一気に冷めてトイレ・タイムに突入してしまうのです。その状況はステージから痛いほどにわかるはずです。それでもやり続ける勇気が、残念ながら今のTPにはないのでしょう。しかも思い出したように時々演奏するだけでは完成度が高まる間もなく、出来も決して良くはありません。これぞ悪循環です。どこかで断ち切られることを願って止みません。

今の状況は果たしてバンドにとってHAPPYなのだろうか?ファンにとってはどうなんだろうか??(そんなことをウジウジ考えるファンはダメですか??)

TP&HB が元気に活動を続けてくれるお陰で、我々ファンはライヴを観ることができます。それは何よりも幸せなことには違いありません。でも… 私自身はわがままなファンゆえに、より良いもの、より以上のものを求め続けてしまいます。TP&HB はそれに応え続けてくれるでしょうか???そうであると信じていたいと思ってます。

I don’t believe the good times are over. I don’t believe the thrill is all gone.

(セットリスト情報は追って掲載します)